最近に日本のお寺で、お坊さんではない方に、履物はきちんと揃えて下さいねと申し上げることがあった時に、忽然と思い出したことがあります。
お坊さんになりたての頃、日本のお寺で修行中に履物の向きについては厳しく躾けられたのに、何年か後にタイで修行させて頂いた時、タイのお坊さんたちが僧坊の前で乱雑に思い思いにサンダルを脱ぎ散らかしているのを見て、ついつい私もそうしていました。
そうしたら、同じバンコク市内に、やっぱり日本でもお坊さんをしていた方がテラワーダ仏教僧として修行しているお寺があって、その方の僧坊を訪ねた時、彼の所に来ていたたくさんのタイのお坊さんたちと同様に、私も適当にサンダルを脱いで上がったら、ああ、あなたもですか、私はタイのお坊さんたちに、まず履物を揃えるように教えているんですよと、たしなめられました。
その時、私の心の中には、分かってる、そんなことは日本でもちゃんとやっていた、タイ人に合わせて郷に従っただけだ、ざっくばらんなタイ人の性格は素敵じゃないか、あなたが大乗仏教徒でありながら、タイで修行生活を送る中で心が葛藤しているのはよく分かるけど、などと、我がまま放題ないろんな思いが、いっぺんに去来しました。
けれどそんなことは全部、自分勝手な言い訳ですね。まずは素直に履物を揃える。そんなところから、修行は始まります。