小豆島巡礼と、ひだる神の話 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 小豆島八十八ケ所、ご存知の方もあるでしょう、よくある地方の町おこし的な札所と違い、小豆島の札所は弘法大師空海が四国と本土との往復時に立ち寄った霊蹟で、江戸時代の初期から続く、四国八十八ケ所と同じくらいに古い巡礼路です。

 私は昔、タイでの修行を終えた後、四国八十八ケ所を歩いて巡り、その後インドでの修行の後に、今度は小豆島八十八ケ所を巡りました。

 一週間で歩いて巡れる小さな札所なので、なるべく身軽にシンプルにと心がけ、ある日お接待で頂いたみかんを、その日に食べずに、次の日の朝食にしよう、早朝に食べてしまったら、結局お腹がすくので、峠を一つ越えてから、ゆっくり食べることにしようと思い、あくる朝、何も食べずに、寝袋一つで野宿した、無人のお堂を後にしました。

 そうしたら山道をいくらか登っただけで、突然、経験したこともない疲労感と倦怠感がとり憑いたように全身を襲い、もはや一歩も歩けません。おお、これぞ、噂に聞く「ひだる神」!

 柳田国男や南方熊楠の著作でもおなじみです。山道を空腹のまま歩いていたら、突如ひだる神という妖怪がとり憑いて、何か食べ物を食べない限り、生死にかかわることもあるということですが、ともかくは、空腹時とは言え、平地だったら何ということもない歩行が、上り坂では命取りになるほどの体調悪化をもたらすという訳なのでしょう。

 大事に取って置いたみかんをその場で食べて、なんとか事なきを得ることができました。それから峠を越えて夜が明ける頃、結局、改めて何か別の朝食をとったのでしょうけれど、何分かなり昔のことなので、詳しく覚えてはいないのです。

                             おしまい。

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