江戸川乱歩が好きだ。10年ほど前に「アニミズムのエロス 江戸川乱歩論」で第5回創元推理評論賞の佳作を取った小松史生子氏という方が、今は名古屋の大学の助教授になられていて、「乱歩と名古屋」という著作を出している。
乱歩と都市論と言えば、松山巌氏の「乱歩と東京」が有名だが、私は都市論よりも、旅や町歩きが好きなので、例えば乱歩作品に出て来る大阪の地名を核に物語を紡いだ、芦辺拓氏の「明智小五郎対金田一耕介」みたいな作品の方が好きだ。
お坊さんになったお陰で、日本だったら関西2府4県、東海2県と東京に、海外ではタイとインドの2ヶ国に住むことができた。アジアの町はどこも楽しいが、台北、バンコク、釜山にコルカタ、アジアの町と同じくらいに楽しいと私が思う日本の町は、京都と神戸と大阪だ。
大阪の出て来る物語なら織田作之助、神戸だったら稲垣足穂、京都だったら梶井基次郎の「檸檬」が楽しい。
ついでながら「檸檬」と言えば、丸善が出て来ることで知られているが、私は丸善と言えば「檸檬」ではなくて、江戸川乱歩の「心理試験」を思い出す程に、乱歩が好きだ。