合掌が好きです。 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 合掌が好きだ。お坊さんなので、日本では事あるごとに合掌する毎日だから、合掌好きの私には嬉しい限りなのだが、長い間インドにいて帰国した時に、日本のお寺に挨拶に行って合掌したら、そのお寺の奥さんに、あらあら、それじゃあこっちも合掌しなきゃね、みたいに言われたことがある。

 つまり日本では挨拶時に合掌することが一般的ではなくて、その方はインド帰りの者がインドにかぶれて、合掌しながら、「ナマステ」とでも言ってるように感じたのかも知れない。

 お坊さんになってすぐの頃の私には、もちろん合掌の習慣などなかったけれど、得度した後、小僧修行に入ったお寺にお忍びでお参りに来た他宗の管長さんが帰られる時、掃除の手を止めて合掌で見送っていた先輩僧が、あいつはぼんやりしてるように見えてさすがはうちの小僧頭だと、老僧に褒められているのを見たことがあって、その時に私は、いつ何時にでも合掌することの素晴らしさを、たちまちに了解したような気がしたものだ。

 今も私は日本のお寺にいる時は、誰かれなしに合掌する。合掌慣れしていない人が、ハッとした顔で慌てて合掌を返して下さることも多いのだが、そのハッとしたお顔を見て、ああ、自分も気をつけて合掌しなければと、改めて思い直しつつ合掌する。私は合掌が好きだ。


※テラワーダ仏教のお坊さんが在家の一般人に対して合掌しないことについては、
「合掌」を、

アジア各国における挨拶としての合掌についてと、合掌という作法の起源については、
「アジアの合掌」を、
ご覧ください!!