尾籠な話で恐縮ながら、本日はトイレのお話。
アジアのトイレ事情については、前川健一氏の名著「旅行記でめぐる世界」にも紹介されている、「アジア厠考」、「東方見便録」の労作2冊が、とても詳しい。
ご承知のように、熱帯アジアでは用便後、金属製の缶々や計量カップのようなプラスチックの入れ物などに水を入れて、下半身を洗う。タイなどの、比較的高級な建物のトイレには、専用ノズルホースが作りつけてある場合もあるが、缶やカップもまだまだ健在だ。
さて、これも昔々のお話。ある仏教グループが、インドのブッダガヤにある日本寺で、仏教讃歌や日本芸能を奉納したいから、現地でもコラボレーションのためにインド舞踊のグループを探してほしいと依頼して来られた。
その結果、ビハール州の州都パトナから、若くて都会的なインド人女性のグループが来てくれて、催しは盛大に行われたのだが、その時に、妙齢の女性たちが代表者を立てて、恥ずかしそうにお寺に苦情を言って来た。
日本人団体の宿泊用に建てられた日本寺の客室のトイレには、紙はあっても、水缶(インドでは英語のジャグ jug という言葉を使う)は置いていなかったので、女性たちがトイレに行けないというのだ。
そこで慌てていくつものジャグを用意して事なきを得たのだが、当時の駐在主任、三橋ヴィプラティッサ比丘が感心したように、やっぱりインド人ですねえ、あんなきれいなお嬢さんたちが、トイレに行く時は……と、その後に仰った言葉が、私にはとてもおかしかったのだが、尾籠の極みにつき、本日はこの辺で。
おしまい。