ダルマさんはなぜ赤い?…インドから渡来したお坊さん ② | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 ダルマさんがなぜ赤いのかをインターネットで調べてみると、およそ以下のようなことが書いてある。

① モデルとなった達磨大師が、インドから中国に渡来した時に着ていた南方仏教僧の赤い衣に由来する、というもの。

② 高僧の位を表す緋色の衣に由来する、というもの。

③ 疱瘡神が赤色を嫌うから、疫病除けに赤い色を塗ってある、というもの。

④ 赤が陰陽五行説で火を表すことに由来する、というもので、これは「ダルマの民俗学」(岩波新書)の著者、吉野裕子氏の説。

 インドから渡来した達磨大師は、当然、現在のテラワーダ僧と同じく黄衣を着ていて、中国人にとってその印象がとても鮮烈だったから、①の如く、ダルマ人形は赤く塗られたのだろうと思う。

 高僧の位を表す緋の衣、などという②の説は誰が言い出したものか、もっともらしい話だが、時代を考えてみれば、あり得ないことがわかるだろう。

 ③の疱瘡除けとか、④の陰陽五行がどうしたとかの説も、赤色が何らかの魔除けを表しているのはある程度、真実かも知れないが、まず第一段階の、ダルマさんがなぜ赤いのかという素朴な疑問に答えていない。

 吉野裕子氏の著書や学説はいつもそれなりに面白いのだが、何でもかんでも陰陽五行に結び付ける牽強付会感は、どうしても否めない。

 達磨大師は南インドのカンチプラム生まれだそうだから、大師は近くにある海岸寺院や岩壁のレリーフで有名な海辺の町、マハーバリプラムの港から、船で中国に向かったことだろう。私はカンチプラムを訪れた後に、マハーバリプラムで岩に刻まれた聖仙(リシ)像を見ながら、昔の中国人が見たインド人のお坊さんは、こんな姿に見えていたんだろうなあと空想したものだ。



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