インドのムンバイに向かう機内で、コンタクト・レンズを失くした私に話しかけてきたインド人の瞑想は、 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 ムンバイに向かう飛行機で隣り合わせたインド人の紳士が、お坊さん姿の私に興味を示し、私もちょっと仏教をかじっているのだが、と話しかけてきたことがありました。

 仏教って、つまりはどういうものだと思う? と議論を吹っかけてくるので、一生懸命答えると、ああ、cause and effect(原因と結果・因果)のことだね? などと、さらりと返して来ます。

 そして私が、仏教の真理は頭の中の理屈では駄目で、必ずや坐禅瞑想によって体得されねばならないと言うと、うん、私もムンバイのあるセンターでmeditationに通っていて、もう第何ステージまで進んだよと、ちょっと得意げに話すのですが、ちょうどそのぐらいから、と言うのも私は当時、コンタクト・レンズを使用していたのですが、そのレンズの具合がどうもゴロゴロして調子が悪く、ずっと気になっておりました。

 ムンバイに近づき、機体が高度を下げる頃、ちょっと瞼を触ったはずみにレンズが外れて座席の下に転がりました。ごそごそと探しながら、インド人の話も上の空で、ついに着陸してもレンズは見つからず、ようやく紳士は、レンズを失くしたのか? と聞いてくれました。

 そうだ、と答えると、おお、と言っただけで、今までとは打って変わった態度で、good luckの言葉を残し、降り遅れまいと即座に自分の荷物を手に取って、そそくさとインド人は乗降口に向かって駆け出しました。

 good luckという彼の祝福の甲斐もなく、不運にもレンズは見つからなくて、私も降り遅れまいと駆け出しました。そんなこんなでバタバタしてて、彼の瞑想が第何ステージまで進んでいたのか、そもそも、その瞑想はどんな種類のものを指していたのか、その仏教センターとはどこのことだったのか、残念ながら何も分からずじまいです。

                    おしまい。




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