インドのサモサと日本のコロッケ | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 サモサはジャガイモをすりつぶし、豆粉の皮で三角に包んで揚げた食べ物で、インドの路上や駅のスタンドなどで、日常、よく食べられているスナックだ。チャトニー(薬味)やケチャップを添えてもおいしいその味は、手頃な値段もあって、旅行者にも強い味方だ。ちなみにシンガポールでよく見かける、カレーパフは、サモサが原型だ。

 日本のカツレツという言葉の語源であるカットレットは、インドでは一口サイズのコロッケに似た食べ物を指すが、サモサやカットレットは、屋台だけでなく、インドの中級レストランでも食べることができる。

 庶民生活原理主義者のバックパッカーのように、こうしたスナックは町中で食べるのが身上で、レストランで食べるなんて言語道断だなどと息巻くつもりはないが、かと言って、高い値段の、きれいなお皿にナイフとフォークを添えて出されたサモサが、町中で食べるサモサ以上においしいということも、まずない。

 ところで、バックパッカー上がりの日本人女性が、アジア雑貨店の片手間に供している高いサモサを、つい、うっかりと食べてしまって、こんな物を食べるなら、コンビニでコロッケを買うんだったと思ったことがある。

 インドやタイ、台湾、韓国などでは、屋台や露店の存在はごく日常的だが、現代の日本では縁日や特定の屋台街などを除いて、野外での食事はあまり一般的ではない。だから縁日での買い食いを、アジアっぽいと思う日本人もいるかも知れないが、日本の縁日には、アジアの露店と比べると、一つ大きな相違点がある。

 日本の縁日の屋台の食べ物は、油断していると却って普通の店で食べるより高いのだ。これはいけない。それに比べて日本のコロッケは、肉屋さん、コロッケ専門店、スーパー、コンビニ、どこでも買えて、とにかく安い。せいぜい100円前後、下手をすると5、60円で買えて、家のおかずにするも良し、歩きながら食べるも良し、正にコロッケは、日本のサモサだと思う。

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