立春とは名のみ、大雪の降る地域もあるが、この寒空の下、今夜、路上で眠る人もあるだろう。私は四国遍路の最中に、野宿をしていて寝袋に霜が降りたことがある。だから、屋根の下で布団にくるまって眠れるのは、幸せなことだなあと思う。
四国の十夜ケ橋(とやがばし)は、弘法大師が宿を借りれず、橋の下で野宿したら、寒さのあまり、一夜が十夜にも思われたという故事にちなむ史跡だ。ということは、弘法大師ですら、屋根の下で寝る方が普通だったということだ。
アジアを旅するバックパッカーで、野宿もしつつ旅する人がいるそうだが、私自身は野宿パッカーと実際にお会いしたことはない。
タイのプラ・トドゥン(頭陀僧、巡礼僧)の場合、暖かい国の野宿だから、多少は体も楽だろうけれど、それでも路上で眠るときの一抹の淋しさはあるだろう。
インドには路上で眠る人がいっぱいだ。日本の知識人の中には、彼らはまるで瞑想しているかのようだった、などと勝手なことを言う人もいるが、でも路上で眠るインド人たちだって、お金があれば宿に泊まるし、家があれば、道では寝ない。
今夜、寒空の下、路上で眠るすべての人が、安寧でありますように。