お坊さんの呼び方…最終完全版、これさえ読めば大丈夫。 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

アジア各国並びに日本の諸宗派におけるお坊さんの呼び方については、ホームページ「アジアのお坊さん」に詳しく書きましたが、単に自分のお家に来るお坊さんに何と呼びかければ良いのか分からず、インターネットで検索する人が多いということなので、少し重複しますが、改めて書いてみます。
細かい内容や、日本以外のアジア各国の事情に関しては、上記のホームページを参照して下さい。
 
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・関西地方…「おっさん」。和尚さんが訛ったもので、関西地方一円で現在でもよく使われているが、都心部の人や若年層には知られていないことも多い。上方落語では必ず使われているから、古い関西弁だ。お住持さんが訛った、「おじゅっさん」も同様の事情だが、現在、こちらは「おっさん」以上に、年配者のみが使用する傾向にある。

 

 

・東海地方…「おっさま」。やはり和尚さんが訛ったもので、使用状況は「おっさん」と同じく、若年層には余り馴染みがないが、今でもある程度は耳にする言葉だ。

 

 

・禅宗…お坊さん一般を「和尚さん」と呼ぶ。禅宗のお坊さんは他宗のお坊さんのことも、こう呼んで下さる。
ちなみに「方丈さん」は主に禅宗の住職級の方。
托鉢僧、修行僧を指す「雲水さん」も、厳密には禅宗の修行僧のみに使う。

 


余談ながら、私自身は「和尚さん」という言葉が嫌いではないし、インドの原語を考えてもかなり適切だとは思うが(佐々木閑氏などは学術的な見地からちょっと違う意見を述べておられるがそれはさて置き)、そう呼ばれて違和感を覚えるお坊さんもいるし、一般の方でも「和尚さん」と聞くと昔話の好々爺然としたお坊さんをイメージする人もいる。
 

 

・日蓮宗…「お上人(しょうにん)さん」。やはり日蓮宗の方は、他宗のお坊さんのことも、お上人さんと呼んで下さる。

 

 

・浄土真宗…「先生」。真宗のお坊さん同士も、他宗のお坊さんにに対しても、また在家の方がお坊さんのことを呼ぶ時も、「先生」を使う。「先生」という言葉は、真宗以外のお坊さんも使うし、特に業者さんはお寺や宗教関係者にこの言葉を使うことが多いが、「先生」と呼ばれることに違和感を感じるお坊さんも、結構多い。

 

 

・「御坊」「御出家」は現代ではまず使わない。「ご住職」は便利だが、住職でないお坊さんや、見知らぬお坊さんに呼びかけるには適切でない場合がある。「○○寺さん」のように、寺の名前で呼びかけるのも一つの手だが、これもあらゆる状況には対応できない。

 

 

・院主さんだとか、ご院さんだとか、法印さんだとか、宗派や地域によって様々な呼び方があり、インターネット上でもそうした回答を良く見かけるが、実際問題としては、同じ地域であっても、各お寺によって全く呼び方が違ったりするので、鵜呑みにするのは要注意だ。また「和尚」を何々宗では「かしょう」と呼び、他の宗派では「おしょう」と読むといった豆知識も、実際の呼びかけには何の役にも立たないから、混乱を招くだけだ。

 

 

・長々と書いてきたが、僧侶を表す最も一般的な現代日本語は「お坊さん」だが、呼びかけとして、あらゆる場合に使って、ほぼ間違いないのは「お寺さん」ではなかろうか。
もしも、あなたが地域社会の慣習やしがらみに無縁で、単にお坊さんへの呼びかけが知りたいだけなら、たとえ相手がお寺を持たないお坊さんだったとしても、「お寺さん」と呼んでおけば大丈夫。

 

 

・反対にあなたがムラ社会のしきたりにがんじがらめで、間違った呼び方をして恥をかけない状況にあるのなら、インターネットなど検索していないで、迷わずお寺さん本人に尋ねてみるのが一番だ。
 
 

 

 
              おしまい。