映画『天空の蜂』は原発について考える‘きっかけ’にはなるエンタメに振った作品。 | 【映画とアイドル】

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🎬『天空の蜂』(2015)

 

毎年 特にこの時期になると

東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故のことが思い起こされて

TVなどでもよくやりますが、

ボクは原子力発電には反対です。

子供のころ長崎に住んでいたから

核の恐ろしさを子供心に感じていて、

その気持ちはずっと変わっていないからです。

 

ただ、現実的には

福島での事故を受けて‘原発ゼロ’を目指してきたドイツでさえ

ウクライナ危機の影響で原発の稼働を延長したり、

日本に至っては、新規の原発までをも作る方向に舵を切るという

福島の事故の恐ろしさを忘れたのか?と思うような流れになっています。

事故処理に数十年を要し、

処理水の海への排出も近づいてる現状で、

原発容認の空気になっているのが何だか恐ろしいです。

電気の便利さを享受していてそんなことが言えるのか?という意見もあるでしょうが、

日本は被爆国で、その上 最大に深刻なレベルの原発事故を経験したわけですから、

そんな日本という国がやるべきことがあったとボクは思っています。

ドイツが脱原発を目指したように。

 

ボクに言わせれば、外国が日本を攻めようと思ったら

原発をおさえたら簡単に出来るんじゃないか?と思うほど

原発の存在は怖いです。

そもそもこんな狭い国で、しかも地震大国なのに

原発に変わるエネルギー政策に本気で取り組んでいるように見えないところが理解できません。

 

 

そんな考えがずっとあったから

原発テロを描いたこの『天空の蜂』は公開当時気になってて、

今の原発政策に不安を感じていたので

レンタル落ちDVDを見つけて

遅ればせながら鑑賞しました。

 

 

堤幸彦監督は多くの映画・ドラマを手掛ける著名な監督ですが、

ボクは全くこの監督の作品を観た記憶がなくて、

それゆえ本作の出来も未知数でしたが

最初から最後まで退屈しない作品になっていて、

全国の原子力発電所の稼働の停止を目的としたテロ事件を描くので、

その内容から政治的な要素も多分に含むんじゃないかと思ってましたが、

そこは程よく抑えていたので、

基本的にはエンターテイメント作品として良く出来ている映画だと思います。

 

ただ、邦画にありがちな(と、ボクは思っている)

わざとらしいセリフや鼻につくキャラ描写などが散見されて

少し萎えますが、中盤以降は気にならなくなります。

 

 

 

 

 

 

ボクは読んだことないんですが

原作が人気作家の東野圭吾さんなので、

そのストーリー展開にはなかなか引き込まれます。

 

ボクはてっきり福島第一原発事故の後に書かれたと思い込んでたんですが、

1995年に出版されてたそうで、

大きな原発事故が起こる前から原発への問題意識を持って書かれているのがさすがです。

 

ただ、脚色のせいもあるのかもしれませんが、

ツッコみどころがちょくちょくあるのは事実です。

しかし、基本的にはエンタメ方向に振っているので

そこはそんなには気にせず観ることができました。

 

 

 

 

架空の巨大ヘリを原発上空でホバリングさせ

燃料が切れたらそのまま落下してしまうという設定で

そのヘリのCGの完成度が心配でしたが

これがよく出来ていて、明確なタイムリミットもあるので

サスペンスの向上につながっています!

 

 

 

二段構えのクライマックスがあって盛り上がるので、

(これはないやろうw)と思いながらも

けっこう胸が熱くなってました!!

 

 

 

江口洋介さんの安定の主役ぶりに

ドスの効いた声で対する本木雅弘さんの演技がなかなかの迫力。

 

綾野剛さんもさすがの存在感ですが

犯行に至る経緯・心情をもっと描いた方がよかったと思います。

 

 

 

 

 

 

エンタメに振ってるのはいいんですが、

その分、原発の是非についての作り手のスタンスをぼやかしている印象があるのはズルい気はします。

 

 

 

本作は原発の問題を提示しながら、

もっと広い意味での問題提起もしていて、

それが特に日本人に対して問いかけていると思わせるところが印象的でした。

それは、原発が日本にいくつもあるからというのではなく、

日本人の気質そのものに対して警鐘を鳴らしているかのような印象を受けました。

 

 

ボクはそれは無関心・無意識だと思います。

もしくは関心・意識はあっても

その問題に対して行動を起こさないこと。

 

分かり易い例えで言えば、投票率の低さとか。

 

特にこの頃の情勢、

ハッキリ言ってしまえば

政権・政府のやってることの数々を考えたら

他の国なら国民による暴動が起こってもおかしくないほど理不尽なことだらけ。

生活は一向によくならない。

治安が良くて平和というところは認めますが、

それは国民性によるもので

その大人しい国民性から国にナメられてる気がするほど

特に去年以降腹立だしいことばかりです。

でも、多くの人が投票にすら行かない。

それじゃ現状が変わるハズもない。

 

こういうことを日頃から苦々しく思ってるボクからしたら、

テロ行為というものが絶対的に悪いこととは思いつつ、

危機感のない国民に気づきを与えようとした犯人の目的・意志は解かるところがありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日本の沈黙する群衆に!」

 

「本当に狂ってるのは誰なのか?

 いつかお前たちは知ることになる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本作は原作とは違って、東日本大震災の後で作られたから

そのエピソードが加えられているのはいいんですが、

福島第一原発事故には言及していないのが残念でした。

 

ハッキリと明確には反原発のメッセージを発せられない限界を感じましたね。

 

映画ですら本当の意味では

沈黙してしまうのが日本という国なんやと思います。