The Secret Life of Bees (2008)
この作品は先日観た『評決のとき』と同じく、黒人差別の問題が大きく報道されると思い出す映画の一つです。
ただ、今回自分自身気づいたんですが、映画館で観て以来11年間観てませんでした。
映画館で観て凄く良かったからDVDもスグ買ったんですが、
今回棚から出したら封が開いてなかったんです(^^ゞ
『評決のとき』は何回か観たのに、本作はなぜ家では観てなかったのか考えると、
人種差別の問題が表面化すると怒りがこみ上げて、それをある意味ストレートに表現した『評決~』を観たくなるんですが、本作『リリィ、はちみつ色の秘密』は黒人差別を描いた映画でありながら、そこには怒りよりも優しさがあるんです。それに、劇的なドラマというわけでもありません。
いたって普通の生活を描くことで、人種差別の愚かさをさりげなく教えてくれる、そんな映画なんです。
ボクはこの邦題が好きなんです。原題を直訳したら‘ミツバチの秘密の生活’ですが、
この かわいい感じの邦題が気に入ってます^^ このタイトルから黒人差別の作品を想像する人はいないでしょうね。
でも、実は作品の内容を何気に的確に表現しているタイトルでもあります。
幼いころの事故で母親を亡くしてしまった主人公リリィ(ダコタ・ファニング)が、暴力的なところがある父親(ポール・ベタニー)のもとを離れるべく家出するところから物語は始まりますが、その旅のお供になるのが黒人の家政婦ロザリン(ジェニファー・ハドソン)。
舞台になる1964年当時、やっと黒人に選挙権が与えられた時代で、冒頭から黒人差別の暴力的なシーンがあるんですが、アフリカ系アメリカ人の女流監督ジーナ・プリンス=バイスウッドは冒頭こそシビアに差別の場面を見せますが、それ以降はあえてそれを強調はせずに、いい意味で物語りを淡々と描いていきます。
リリィとロザリンがふとしたことがきっかけで辿り着いたのが、蜂養場を営む黒人姉妹の家。
今回の二回目の鑑賞で気づきましたが、冒頭のシーンから、リリィがその家族に出会うべくして出会ったことが分かります。
この黒人姉妹を演じるクィーン・ラティファ、アリシア・キーズ、ソフィー・オコネドーがみんな素晴らしいです。
クィーン・ラティファは母性感が溢れる女性を演じさせたら右に出る者はいないですね(^.^)
もちろん名子役時代から現在に至るまで活躍を続けて頑張っている
ダコタ・ファニングちゃんもさすがの素晴らしさです!
原作のスー・モンク・キッドは小説を書いている時からダコタちゃんをイメージしていたそうです。
リリィの過去のトラウマが非常に重いので、普通なら暗いドラマになりがちですが、
意外に前向きなストーリー展開に、黒人姉妹たちに癒されていくリリィと同じように
映画を観ているボクたちも癒されていきます。
でも、差別がまだ堂々とはびこっていたような時代(そもそも2020年になった今でも黒人差別が無くなっていないのが現実)ですから、それに伴う切ない事件も起こってしまいます。
映画館の入り口にまで人種差別があるのが驚きでしたが、
白人と黒人が一緒に映画を観ることも叶わない世界は
純粋に惹かれ合っているリリィとザック(トリスタン・ワイルズ)の姿を見ていたら本当に切なかったです。
悪役の役回りのはずだった父親にも同情すべきところがあったことが終盤語られて、
黒人に敵対する白人の描写も少ししかありません。
監督自身が言うように、あくまでも本作は黒人たちが生きるために‘生活している’様をそのまま映し出しています。そこに白人の少女のリリィが入り込んで一緒に生活をする。
そう、生きていくために仕事をして御飯を食べて、音楽を聴いたり 恋だってもちろんする。
人間が生きていくということと肌の色の違いは関係ないんです。
リリィがみんなと楽しく生活して徐々に明るい自分を見つけていく姿を見ていたら
差別がどうのこうのというのは気にならなくなってきます。
だからこの映画はまるで初恋物語のような余韻も与えてくれるのが好きです。
ミツバチにだって生活がある。
人間だって肌の色に関係なくそれぞれに生活がある。
ミツバチは人間が恐怖心を見せなかったら刺してはこない。
お互いがお互いに優しさを持って接したら、
結局は相手だけではなく自分自身を救うことにもなる。
優しさが溢れるこの映画を観ていたら、そんな気持ちになれました(#^.^#)
ボクにはまだまだ優しさが足りませんが(^^ゞ
リリィが紡いだ物語は想像できるような気がしました(^.^)