本作はリアルなSF映画として間違いなく傑作やと思いますが、
それは冒頭の、謎の飛行物体が地球に襲来した時の描写のリアルな緊迫感がまず凄かったからです。
何かとんでもないことが起こっていることを徐々に察知するルイーズ(エイミー・アダムス)と、平静さを失う世の中の姿が非常にスリリングです。
冒頭から緊張感はMAXになりますが、本作はそのサスペンスを必要以上には煽りません。
物語の本筋が動き出すと、どちらかというと静かにその物語は流れ出すんです。
もちろん 要所要所を締めたサスペンス演出は見事ですが、
本作で最も重要なのはルイーズの心の中になってくるからです。
エイミー・アダムスは自身も母親ですから、娘を失った悲しみを抱く女性が見事にはまり、かつ、
言語学者としてのクレバーさも嫌味なく見せ切っているところがさすがです。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が出演を切望したのもよく分かります。
エイミーは柔らかいイメージもある女優さんですから、ともすれば小難しい印象の映画になりかねない本作に、エイミーだからこそ出せた優しい雰囲気を、緊迫感の中にもしっかり漂わせてくれているところが、観ていて不思議な心地よさがある1つの要因であるような気がします。
物理学者のイアンを演じたジェレミー・レナーは、今までアクションのイメージが強かったから、学者役、しかも物理や数学のエキスパートが似合うのか若干疑問でしたが、さすがに上手かったですね。
本来のイメージとは違うところを実は狙ったようなキャスティングで、頭でっかちな学者然とした雰囲気がないからこそ、ルイーズの相手役としてピタッとハマっていました。
そして、本編を観るまでは この主役二人の影に隠れてた感もなくはなかった、ウェバー大佐を演じたフォレスト・ウィテカーがまた素晴らしい。
軍人やから政府側の人間。当然 国の意向に沿った行動をするわけですが、ルイーズたちに必要以上に高圧的な態度に出ないところがよかった。かといって必要以上に情に流されることもなく、あくまでも自分に与えられた職務を忠実に遂行する役どころ。
これが並の映画であれば、イージーに嫌われ役的なキャラになりがちなポジション、もしくは主人公を助ける胸アツなキャラにすることも可能なんですが、ウェバーはあくまでも 目の前で起こる事態に対して適切な対応をしていく。ある意味一番リアルなキャラはこの大佐やったかもしれませんが、こういうサブキャラにまで強い説得力があると作品全体が俄然締まることは間違いありません。
中国の将軍を演じたツィ・マーも意外にいい味を出してくれていて、どこかで見た顔やと思ったら
『ダンテズ・ピーク』の調査隊の一人でしたね^^
あと、馴染みのない俳優さんやったんですが、捜査官を演じたマイケル・スタールバーグもいい感じでした。この捜査官はやや憎まれ役的なキャラでしたが、そこも過剰な演出はなくて、非常事態に陥った状況を考えれば、すこぶる納得できる言動の範囲やったのがよかったです。
他にも憎まれ役的なポジションにあたる登場人物がいますが、そのキャラクターたちの行動も、この状況下においては有り得ると納得できるものでした。
このように全ての登場人物の言動がリアルゆえ、そのプロットや映像処理によるものだけではなく、
ドラマとして非常にリアルなSF映画の傑作が誕生したのを、SF映画好きとして嬉しく思いました。
もう一人、忘れてはならないのは、ルイーズの娘を演じた子役ちゃん。
とても可愛らしくて演技がすごく自然。この子と母親であるルイーズの描写はとても大事なシーンでもあるので、この子役の素晴らしさも決して忘れてはいけません。
今調べたら、アビゲイル・ピョノフスキーという7歳の子役で、本作は2作目の出演だそうです。
7歳でインスタグラムやってます(^^ゞ
二十年後にはアビゲイルちゃんが今のエイミーみたいなスター女優になっている☆
ボクにはそんな未来が確かに見えました^^