📖『 ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 〈上〉 』
ワケ分からんタイトルやと思ってましたがw 読んだら納得のタイトルです^^
『2』では完全にリスベット・サランデルが主役になっていましたが、
今回のサランデルは活躍しづらい状況に追い込まれていることもあって、
ジャーナリストであるミカエル・ブルムクヴィストが主役に戻っている印象を受けました。
本シリーズが徹底的に面白いのは
リスベットの稀有なキャラクターがあるからなのは間違いないですが、
主役を正義感溢れるジャーナリストであるミカエルに設定していることから、
ジャーナリズムというものを問うシリーズになっているのが更に引き込まれる要因でもあります。
著者であるスティーグ・ラーソン自らが、人道主義的な政治雑誌を創刊し、編集長まで務めていたことが
あったそうなので、ミカエルがラーソン自身のジャーナリストとしての姿勢を投影したキャラであることは
容易に想像できます。
冒頭にラーソン自身の記述があるんですが、
「女性も南北戦争に多く参加したという事実をハリウッドは見落としている」ということが書かれているんですが、本シリーズにおけるリスベットの描き方を見ても分かる通り、ラーソンは女性の権利・立場をとても尊重している人物であることが分かります。
‘不当な権力に立ち向かう’という姿勢がミカエルのキャラクターに感じられるのは、
ラーソン自身がそういうスタンスで生きていたからなんでしょう(本シリーズ発売前に五十歳で死去)。
登場人物の思考=作者の思考と考えていいと思うんですが、
登場人物である警察官の考えていることが、現代における犯罪事情に直結しているところもさすがです。
~(現実か想像か定かでないもの、とにかく不公平な扱いを受けたと思い込み、それを根に持って極端な行動に走った連中もいた。ひどく精神を病んだ者、途方もない陰謀が企てられていると信じ込み、
普通の人々が捉えることのできない秘密の啓示が自分だけに届いていると主張する者が、
世の中には確かにいるのだ。)
ミカエルの
(情報操作こそあらゆるスパイ活動の土台だと学んだばかりだった。そしてたったいま、
彼は妹との会話に情報操作を取り入れた。長い目で見ると、
これは計り知れない効果を生む可能性があった。)
‘情報操作’と言うと、一般人のボクらには関係ないように思いますが、
実は日々の生活で それに近いことをやっているような気がするのは、ボクが腹●やからでしょうか(笑)
あっw 主に職場でねww
ミカエルの妹で弁護士であるアニカが捉えるミカエル像―
(彼はいったん相手を友人と認めると、たとえその相手が我慢ならない行為に及んだり、完全に間違ったことをしていても、馬鹿正直と言っていいほど誠意を尽くす。相手の軽率さをかなりのところまで許す度量があるのだ。とはいえ、目には見えない境界線が設定されていることも、アニカはよく知っていた。
境界線がどこに設けられるかは相手によってまちまちだが、とにかくミカエルはこれまでに何度か、
親しい友人が不道徳な、容認できないことをしたという理由で、彼らと決別している。
そういう状況になると、ミカエルはきっぱりとした態度をとった。)
正義感が強い姿勢がジャーナリストとしてだけではなく、私生活でも出るところがミカエルらしくて、
そういうキャラクターに共感できます。
ボクも一線を超えたら絶対許さない。
ミカエルの長年の愛人であり同じくジャーナリストであるエリカの言葉も、あるべきジャーナリズムの姿を語っていて興味深いです。
「あなたはジャーナリストとして、当局の中枢にいる人物が与えてくれた情報であっても、それをオウムみたいに繰り返すのではなく、疑問視し、批判的なまなざしで見直す義務があるの。」
ミカエルがリスベットに向けたメッセージで、彼が個人の考えを尊重しているのも分かります。
それが信頼している人物ならなおさらです。
“きみの将来を決める唯一の人物はきみ自身だ。きみの将来はきみにしか決められない。”
『3』の上巻まで読み終わりましたが、『2』の直後から話が始まるので、
『2』が四部作になっているような印象ですね。
『2』を読み始めたら『3』の最後まで読み続けるしかありません^^
ミカエルとリスベットの行き着く先を見届けたいです。
終着点が見えるほど甘い話ではないですが。