THE CONTENDER (2000)
【CONTENDER】とは【闘争者】【競争者】【ライバル】という意味。
日本で公開されてから15年。映画館で観てなかなか感銘を受けたから
DVDも買ったんですが、10年以上 封も開けてなかった…(^^ゞ
今さら封を開けたのはw 来月に投票が迫って来たアメリカの大統領選挙を見ていて
本作を連想させるものがあったからです。
もちろん、史上初の女性大統領を目指すヒラリー・クリントンが
初の女性副大統領に指名される主人公と重なったという点はありますが、
むしろ その点よりも、
かってないほどの‘誹謗中傷合戦’になっている今回の大統領選挙を見て、
主人公と、彼女を引きずり降ろそうとする勢力との対立を描いた本作の物語自体を思い出しました。
学生時代のセックス・スキャンダルを暴露された民主党上院議員レイン(ジョアン・アレン)が
‘自分の過去は自分のものであり、今の仕事とは関係ない’というスタンスを貫くところが
本作のテーマそのものに繋がっているところが見逃せないポイントです。
否定しなければ世間からも疑われ、自分が不利な立場になりかねないのに、
そういう過去のスキャンダルに取り合うこと自体を拒否するレインには意志の強さを感じる。
第一、そのスキャンダル自体 別に犯罪ではなく、若気の至り的な行為。
だから 敢えてその指摘には‘取り合わない’ことで自分の信念を示すレイン。
否定するのは簡単やけど、こういうセックス・スキャンダルに取り合うこと自体が、
女性差別を認めることになってしまうから、あえて沈黙を貫くという選択には政治家としての意識も感じるのです。
今回15年振りに観て面白かったのは、当時は悪役と思っていた共和党下院議員ラニヨン(ゲイリー・オールドマン)が、昔ほど悪くは見えなかったところ。
女性の活躍を推進する政府の方針もあって、ボクの会社でも女性の出世が目立つようになりましたが、実際に身近でそういう状況がおこると、(もっと仕事出来る奴はなんぼでもおんのに)と思ってしまうのも正直なところ。
女性を指名したのが大統領(ジェフ・ブリッジス)の人気取りに見えなくもないのは事実。
それは現実の政治の世界でも年々見られる傾向でもある。
だから今観ると、まるで‘悪役不在’的な展開が逆にリアルで面白かったです。
本作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたジョアン・アレンはさすがの熱演!
監督のロッド・ルーリーは彼女主演で映画を撮りたくて脚本を書いたそうで、それも納得のハマリ役です!!
同じく本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたジェフ・ブリッジスは、主演賞候補でもよかったと思うほどの存在感がさすが!
製作総指揮も担当したゲイリー・オールドマンに
レインのライバルを演じた『L.A. 狼たちの街』の危ない刑事役が忘れられないウィリアム・ピーターセン、
補佐官役のサム・エリオットと、渋さ全開の共演陣も見事!!
ベテラン勢の中、野心溢れる若手議員を演じたクリスチャン・スレーターも個性を発揮!
チョイ役でマリエル・ヘミングウェイが登場するのも映画ファンには見もので
正に完璧なキャスティング!!
監督は自分の娘のためにこの作品を撮ったそうで、
主人公レインが貫く信念は監督自身のものなんですね!
一見、単なる人気取りに見えなくもなかった大統領にも確たる信念があったところがいいです。
クライマックスの演説は正に名優ジェフ・ブリッジスの独壇場!!
最後まで信念を貫き通したレインが見せる、まるで未来を見据えたかのような力強い眼差し。
「信念は不利な状況でこそ試される」
これは 男女問わず、胸に置いていて損はないメッセージやと思います。