三年前に映画館で観ましたが、
二階堂ふみちゃんが演じた爆弾テロのキチガイじみた演技が脳裏に焼き付いていました。
オープニングのまるでホラー映画のようなグロさは、
いい意味で日本映画離れした尋常じゃない雰囲気を漂わせ、いきなり緊張感が高まります!!
人間味を全く感じない、冷め切った目線のふみちゃんが恐ろしくて、
このオープニングで完全に引き込まれました!
人としてのまともな感情がないかのようなふみちゃんに相対することになるのが、
その生い立ちゆえ、爆弾テロの女以上に人間としての感情のない脳男(生田斗真)という
異様ともいえるプロットが非常に面白くて、全く目が離せなくなります!
まさに “相手に不足なし!!”状態に入ったふみちゃんが
さらに狂気染みてくる その姿にゾクゾク!!
これほど強烈な対立軸のある映画なんて滅多にないから、
この二人のキャスティングがピタッとハマった時点で本作は成功したも同然か?!!
実質主役ともいえる松雪泰子に、
いつも怪しげな染谷将太クンもピタリとハマったキャスティングも見事!
松雪と染谷のエピソードが、本作のもうひとつの肝でもあるので注目!
もうひとつの肝というか、実は本作が一番描きたかったのはこっちじゃないかと思うほど。
染谷クン演じる前科者が原作にはないオリジナルキャラであることからも、
この映画版においては重要な立ち位置であることが分かる。
感情を排しながらも、肉体的な鍛錬は必要な稀有なキャラクターを演じ切った生田斗真は
本当にお見事!!
一見 冷静極まりない脳男と
気が狂ってるようにしか見えない女テロリストの対立はある種の頂上決戦!!
どちらか片一方のキャラがいるだけでも充分映画として成り立ちそうなインパクトがあるのに、
その ある種のキチガイ同士がガチな戦いになだれ込んでいくんやから、面白くないワケがない!
女テロとその相棒の女のラブシーン的な描写を入れることで、
実は似た者同士でもある脳男と女テロとの間に恋愛感情が芽生える可能性を何気に排除しているのがいい。
爆弾魔の女にはテロリストとしての思想などなく、
ただの人殺しなのが本当に怖い。
意味合いは違っても、‘殺人マシーン’として捉えたら同じに見えてしまう二人が
徐々に交錯していく終盤にかけて緊迫度もUP!
「死ぬまで人殺しを止められない運命なのよ!」
自分が殺されかけたことへの復讐としてではなく、
脳男の、殺人者としての苦しみを終わらせてやるために対決を望んでいるかのような女テロ。
真に狂った奴は、自分以上の好敵手を見つけたら、さらに狂気じみて、かつ ギラギラするもの!!
終始クールな生田斗真と
終始狂ってる二階堂ふみの対決の行き着く先に希望などあるはずがない、その 刹那的な空気もいい。
無頓着なファッションも、普通の女じゃない狂喜をあぶり出してる感じ。
ブチ切れてる ふみちゃんに負けない狂いっぷりを見せてくれた太田莉菜ちゃんもお見事!!
彼女は『海月姫』でも難しいキャラクターを演じ切っていたから、これからの活躍にも要注目!
狙っていた敵を目の前にして、
普段は冷めている瞳の奥に 確かな意志が見えるのがたまらないシーン!!
刑事役の江口洋介が70年代刑事ドラマに出てくるような熱血漢やったり、
意外にベタな演出があるのも事実ですが、
基本的なプロットが面白いので、多少のあざとさは気になりません。
普通は爆弾テロと 爆発を防ぐ側の攻防がメインになるものなのに、
本作のクライマックは完全にテロ側に主導権があり、バンバン爆破シーンが出てくるのが凄い!!
こんな展開はちょっと観たことがない!
映像もなかなかの迫力!!
まるでホラー映画のような顔つきになるふみちゃんの徹底したキチガイ演技は
他の若手女優ではちょっと想像もできない。
ベクトルは真逆とはいえ ‘殺人を止められない運命’にあった二人の対決が主軸ながら、
本作にはその対決以上に恐ろしいものが横たわっていました。
真に悪い奴に更生などあり得ない。
悪は常に身近に存在する。
ある意味純粋に行動し目立っていた脳男と女テロより、
人の目を盗み、人の善意を悪用し、
陰で悪事を企んでいるような奴が一番恐ろしいし
そういう奴は常にどこにでもいる。
そういう恐怖がこの世の中から消えないからこそのラスト。
個人的には続きが観たくなるエンディングでした。