LAW ABIDING CITIZEN (2009)
2009年の作品ですが、日本で公開されたのは2011年の1月だったから、
映画館で観て以来、丸5年振りに観ました。
ボクは【復讐もの】が好きで、『完全なる報復』という邦題そのままと言っていい本作の復讐劇には
心底ゾクゾクしましたが、だからこそ 最後の終わり方がどうもしっくりきませんでした。
しかし、今回は 知ってたぶん冷静に観れたからか、初見では気づけなかった
復讐の鬼と化した主人公クライド(ジェラルド・バトラー)の復讐劇の帰結、
パッと見では成し遂げられなかったように見えたクライドの復讐が彼の気持ちの中では完結し、
5年前は(甘い…)と思ったラストシーンの意味も汲み取ることができました。
ボクのように、ラストに納得できなかった方は、DVDのオーディオコメンタリーも見ることをオススメします。
是非はともかく、製作者の意図は伝わるはずです。
【復讐もの】のポイントは まず 主人公に感情移入できるかどうかですが、
愛する妻と娘を不条理な犯罪によって失った主人公には瞬時に感情移入できます。
そんなボクが観ても、殺人犯を‘処刑’するシーンは 目を背けたくなるほどですが、
実際には残虐なシーンは出てきません。ただし、R15指定です。
その復讐の仕方のシチュエーションが凄まじいがゆえに、
復讐劇の爽快感というよりは、ある種の恐ろしさが作品全体を支配してくるのが見もの。
序盤に実行犯への復讐は遂げるので、普通なら話が終わってしまうところですが、
本作の主人公の凄いところは、本来は死刑になるべき殺人犯をたった数年でシャバに戻した
“司法取引”に加担した人間、いや、そのシステムそのものを抹殺しようとするところ。
だから、今までに観たことのないレベルの復讐劇が展開されるのです。
刑務所に収監されてもなお 復讐劇が続く様が恐ろしくて、
クライドのあまりの手際の良さにワクワクしてしまうほどです。
クライドに完全に感情移入してるから。
悪魔的とも言える頭脳戦を見せる主人公を生み出した脚本が見事ですが、
これを書いたカート・ウィマーは近々公開の期待作『X-ミッション』の脚本も書いてるそうなので
益々楽しみ!
監督のF・ゲイリー・グレイは『ワイルド・スピード』の新作にも起用されて、実力は折り紙つき!!
初めて製作も担当するほど本作に入れ込んだ、バトラーの迫真の演技は背筋が凍る恐ろしさと同時に
なんともいえないやるせなさも体現しているのがいい。
対するニック役ジェイミー・フォックスは、クライドに感情移入したボクが見ても そう悪くは見えないところがポイントで、あくまでも冷静に仕事をこなそうとする検事をジェイミーが好演。
この、バトラーとフォックスの‘対決’というよりは‘対比’を楽しめるのも面白い。
ここまでのスキルがあればニックの家族に手をかけて、自分と同じ苦しみを味合わせるのは簡単なのに、そこには手を出さなかったクライドはまるで孤高の存在に見えるほど。
いや、手を出さなかったというより、クライドの復讐はそんな単純なもんじゃない。
実際に人を殺しながらも のうのうと生きている犯罪者が多いのは世の常…。
具体的な自白までしながら、裁判のまやかしで無罪放免になるなんて話はザラにある。
だから、この作品で主人公が成し遂げようとした復讐の思いは
いつの時代にも警鐘を鳴らし続ける力があるのです。
【善良な市民】が【復讐鬼】になってしまう この腐った世の中、
クライドの“絶対戦争”に終わりはないのです。