『ゴーン・ガール』がすごく面白かったから原作読み始めましたが、
同時にデヴィッド・フィンチャー監督の過去作も振り返りたくなって『ゾディアック』を
劇場公開時以来約8年ぶりに鑑賞しました。 DVDはとっくに持ってたのにw
実は『ファイト・クラブ』もDVDは持ってるのに、まともに見たことない。
フィンチャー監督の作品って、家でくつろいで見る類いのじゃないから、実は『セブン』も20年見てないというね(^^ゞ
フィンチャー監督といえば、その映像スタイルが話題になりがちですが、
実は ストーリーの語り口が凄く上手い人。
だから、フィンチャーの映画を観たら、そのストーリーの面白さゆえ、原作を読みたくなることが多い。
『ファイト・クラブ』『ドラゴン・タトゥーの女』の原作も読みました。
この『ゾディアック』は実在するシリアルキラーを描いているので、実録ものの趣きが強いですが、
そんな原作を徹底したリアリズムで描き切ったフィンチャー監督はさすがです。
今回初めてメイキングを見たんですが、殺害現場のロケでは当時の実際の風景に近づけるために
わざわざ大きな木を植えたり、
実際に捜査した警察署から資料を公開してもらったりとか、異例ともいえる撮影をしていたことに驚きました。
フィンチャーは「事件を掘り起こす気はない」と言っていますが、メイキング映像を見ると、
フィンチャー自身が過去の事件を自分で推理しながら撮っていて、推理するためにもリアルに徹した撮影を敢行していたように見えます。もはや、ただの映画作りを超えているレベルです。
シリアルキラーものといえば、フィンチャー監督を一気に大ブレイクさせた『セブン』を思い出しますが、
本作には『セブン』のような、目を背けたくなるようなシーンがほとんどありません。
フィンチャーは今回 視覚的な恐怖は抑え、ゾディアック事件にハマっていく男3人の姿をジックリ描くことによって、
答えが見つかるかも分からないことにのめり込んでいくことの危険性を描いているのが
非常に面白いと思いました。
特にジェイク・ギレンホール演じる漫画家グレイスミス(本作の原作者でもある)がゾディアック事件にのめり込んでいって、それが家庭の亀裂にも繋がっていく描写が秀逸。
家族との食事中に、ゾディアック事件を報道するTV番組にロバートが夢中になってしまうシーンは、
ケースこそ違えど、どこの家庭でもありえるようなシチュエーション。
こういう一見何気ないシーンで観客の内面をエグってくるのがフィンチャー監督のスゴイところです!!
若手演技派のジェイクの演技も見事!!
もう一人、事件の解明に長年ハマることで精神のバランスを失う敏腕新聞記者エイブリーを演じた
ロバート・ダウニー・Jrも素晴らしい!
彼はもともとドラッグ問題で世間を騒がせていた俳優さんなので、アル中演技もリアルです。
本作のあと『アイアンマン』に抜擢されたのには驚きましたが、今や一番稼ぐ俳優にまでなりましたね!
この二人に比べると、見せ場は少ない印象ですが、トースキー刑事役のマーク・ラファロも好演。
彼は1970年代あたりの時代背景が似合いますね。
今観ると、アイアンマンとハルクが共演していることになっているのも、なんか面白いですw
トースキーの同僚役で『トップガン』のアンソニー・エドワーズを久しぶりに見れたのが嬉しかったです^^
事件の捜査が長きに渡るので、その過程で、この事件をヒントにした映画『ダーティハリー』が公開されているシーンがあるのも、映画ファンの心をくすぐります。
本作を観ると『ダーティ~』のスクールバスのシーンの意味が分かります。
フィンチャーは子供だった当時、この事件の話を父親としたことがあるそうで、
本作に対する入れ込みぶりは、当時の記憶の生々しさからきたものなんやと思います。
フィンチャー自身が純粋にこの事件の解決に興味を持っていたということでしょう。
フィンチャー監督作の中では比較的地味な印象も受ける本作。
だからこそ、フィンチャー監督が苦手な方にも試しに観ていただきたい気がします^^