前回の続きでーす。

中編はお待ちかね、CAR10とHi,how are you?が登場!
(右からマサ子さんのまゆたんさん、Hi,how are you?原田さん、CAR10川田さん、SAGOSAIDさごたん。一段下がって、こまのマチルダさん)

参加者は前編と同じく

加藤さん(すばらしか)
ゴツローさん(キーマカリーズとチチワシネマ)
宅イチローさん(Anorak citylights)
よこちんさん(インディー・インタビュアー)

でお送りいたします!

6.Homecomings / FINE
-over head kick girl、THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADES、NOT WONKという北海道組の勢いの一方で、京都も当時のシーンにおいて重要な地域で、その中でもHomecomingsは中心に居たと言っていいですよね。

ゴツロー:京都のバンドとして初めて買ったアルバムがHomecomingsのsomehow,somewhereでしたね。それを気に入って、よく聴いてはブリーフを汚していたので、このコンピに入ってるのがとても嬉しかったのを覚えています。

宅:1st7'やHi,how are you?とのスプリットも即完売するなど、とにかく初期から人気ありました。

よこちん:初期から人気ありましたねー!気づけば早めに買わないとってのもちょこちょこあって。

ゴツロー:そうですね!フジロックもあったし、京都ではかなり人気だったのではないかと思います!僕のお母さんも当時からラジオとかでよく聴くので知っていると言ってましたよ。

よこちん:I WANT YOU BACKのトートとか余裕ぶっこいてたらJET SETで買い逃しましたし。たぶん、自分たちみたいな人たちも好きだし、それ以外の一般インディーポップ層も反応していたので、勢いあったんじゃないですかね。何枚か音源出して、第一次的な自己紹介を終えたタイミングでこのコンピに収録されたイメージです、時期的に。

ゴツロー:今思ってみると、パンクバンドが並ぶこのラインナップの中に入ってるのが結構凄いことであるなと。

-パンクバンドやそれらのリスナーとの距離感みたいなのってどんな感じだったのでしょう?

宅:ホムカミは京都の感染ライブでodd eyes等とやりつつTeen Runningsみたいなインディーポップ系との親和性の方が高いイメージでした。デビューepもバリバリのギターポップですし。要するにジャンルごっちゃですね。

よこちん:そうですね!odd eyesやSANHOSEとかとやってたので違和感はなかったですし、dead funnyのコンピでJAPPERSやHALF SPORTSらと一緒に収録されてましたし、Miles ApartのクリスマスコンピでTHE WEDDINGSとかとも一緒で、とにかくごっちゃで境目のようなものは感じなかったです。

ゴツロー:やっぱりそういう垣根を越えているのは感染ライブの影響が大きいのかと!

-世代的にはTHE PAINS OF BEING PURE AT HEARTなんかを10代の頃に聴いてたみたいな感じなのでしょうか。Homecomingsに限らずあのバンドの大きさってあるような気がするのですが。

ゴツロー:THE PAINS OF BEING PURE AT HEARTもだし、時代的にズレますがHeavenlyも大きいと思います!

宅:確かKiliKiliVilla側はI WANT YOU BACKばりのキラーチューンを期待していたところ、まさかのPAVEMENTで驚いたらしいです。

-あ~!PAVEMENTですね!!この年代くらいになると特別なNIRVANA信仰とかあまりないですよね。あの時代の全部並列みたいな。その中でPAVEMENTのエッセンスが強いというのは面白い感じがします。

よこちん:このFINEって、のちにHURTSの7インチに収録されましたっけ?今聴き直したら、好きなやつでしたね、この曲。

ゴツロー:HURTSもテラスハウスのBGMになったとかでかなり話題になりましたよ、うちの学校で。

-因みに先日、大変おめでたい報告がありましたが、WHILE WE'RE DEAD.はHomecomingsとCAR10の2バンドが収録された唯一の盤でもあるという。

一同:おめでとうございます!!
(お幸せに!)


7.CAR10 / Tornade Musashi
-そして、そのCAR10!私にとって人生を変えたバンドはSEX PISTOLSなのですが、ここ5年の生活を変えたのは間違いなくこのCAR10。

ゴツロー:高校時代に最も衝撃を受けたバンド!

加藤:CAR10最高!当時、バンドをやる気など微塵もなかったのですが初めて彼らのライブを見たとき「バンドやっても良いかも」と思わせてくれました!

-今、自分がライブに足を運んでるバンドの人達に話を聞くと、CAR10からの影響は、ほぼ全員あげますね。

加藤:ほぼ全員!カリスマ~!

ゴツロー:生ける伝説ですね!?

-そんな感じします。自分らの世代でいうNUKEY PIKESなんかと近い存在。

ゴツロー:このコンピの少し前に出た2ndアルバムのサウンド、曲展開は本当に度肝を抜かれました。聴きまくってた。

宅:Tornade Musashiはその2ndの延長にあることもあり、むちゃくちゃカッコいいですよね。

よこちん:10年くらい観たり聴いたりしてると地続きでわからなくなりがちですけど、こうやって意識的に区切ってみるとTHE GUAYSとのスプリット以降とだいぶ違いますよね。良さは変わらずアウトプットの部分とか。このコンピの曲は大好きですけどレア曲感あります。

-「他のどこにも無いスタイル」という点でいうと2ndを含めたこの時期からTHE GUAYSとのスプリット辺りまでは凄かった。圧倒的個性!

加藤:あの音はすごい!ある意味発明!

-櫛田さんの音色の特異性ですよね。

よこちん:PSYKICK UNDERAGEとのスプリットでffeecowoman、V/ACATIONの小野寺氏により暗躍し始めたリバーブありありの彼らのサウンドが、抜群のバランスで完成した時期の作品かなーと思います。安孫子さんの理解あるミックスの功績もだいぶありますね。

ゴツロー:CAR10を聴いてコーラスエフェクターの概念を知った。

-3rdで完成されちゃったから今となっては影が薄くなりつつありますが、2ndも10年代の頂点に立つ凄い作品ですよ。

ゴツロー:2ndが出たくらいの時にインタビューが2個出たと思うんですけど(こちらこちら)それも何回も読んでました!

-宅さんがやったやつ!

加藤:僕も何回も読んだ。

宅:その2回のインタビューは自分がさせていただいたのですが、割りと生真面目な川田君と能天気なふたりの温度感凄いなーという印象を持ちました。今はその温度感無いんでしょうが。
(CAR10は櫛田さんと永井さんが組んでいたラクマネスが母体となっている)

よこちん:楽曲的には2ndも1stに入らなかった代表曲がいくつか入ってるんですよね。レーベル第一弾オリジナルリリースってことで、パンク畑にもインディー畑にも反応できるような大事な作品だと思います!最近2nd全然聴いてなかったけど!笑

加藤:2nd初めて聴いたとき、歌詞がいいなと思ったな。

よこちん:CAR10の歌詞の言葉選び好きなんですよ、言い回しとか。

宅:KiliKiliVilla初期からレーベルを代表するバンドでもあり、人気と動員が直結しないところも含めて色々しんどい事もあると思いますが、バンドの内面がそのまんま音に出るバンドだと思いますので、所帯持ちになったCAR10の曲を聴いてみたいと常々思ってました。ので、先日のニュースは最高です!川田くんが作る赤ちゃんの歌とか聴いてみたいですもん。

よこちん:宅さんの話を踏まえての余談ですが、こないだ披露してた新曲の歌詞が、「きみを笑顔にするにはもう少しちゃんとしなきゃな」って歌ってて、描いた未来がどうのこうの言ってたので、これ今の心境歌ってんじゃないのかなーってSEVENTEEN AGAiNろっきーさんと自分で勝手に話してました。全然違う可能性もありますが。勝手にグッときてしまいましたね。

宅:その話グッときます!歌を聴けば何となく歌ってる人の気持ちや現状が伝わってくるという、凄く等身大のバンドですよね。早く新しいアルバム聴きたい。


8.MILK / I ALWAYS
-続いてのMILKはJxJxさんがTVブロスの連載で紹介してたのを覚えてます。

加藤:この人たちも発明感ありますよね!

ゴツロー:MILKもかなりキーマカリーズとチチワシネマで影響受けてます。当時の自分達はベースレスの3人だったので、ギターのスカスカ感、ドラムのドコドコ感を意識した完全パクリ曲もありましたよ。ノボルが入る前は楽しかったなぁ~。

よこちん:パンク周りの人には当初からウケまくってましたね。現yep石田くんのバンドとのスプリットでは「ヘキサゴンファミリー」なんて曲もありましたし、まだまだ粗かったんですけど。そこからEPなんかは即完でしたし。

ゴツロー:知った頃にはEPが廃盤になってました。エ~ン。でも、泣かないぞェ!
(鈴木蘭々の1stシングル「泣かないぞェ」)

宅:個人的にはMy ep~WHILE WE'RE DEAD.の頃のMILKが1番好きです。インディー、ガレージ、ハードコア、全部にアプローチできる全方位サウンドだと思いますし、この曲に至ってはVAMPIRE WEEKENDのA-PUNKを一夜干しにしたみたいな曲で超最高だと思いました。

-自分はLOOKOUTのBRENT'S TVに近い感触を覚えたんですけど、そうかVAMPIRE WEEKENDか。なるほど!

よこちん:このコンピの頃、というかいつかまで、みんなMILKは最高!っていうハードルの高さとおもしろがられてる部分が一部にあった気がするんですよ。それが単独のアルバムやライブでのMC、ライブスタイルなんかから、なんていうかシンプルにかっこいいハードコアパンクのバンドみたいに評価が変わってきた感じが個人的にはあります。海外でもめちゃくちゃ盛り上がるのは納得!

-そういえば、ここまでで初のピンボーカル。

ゴツロー:たしかに!このコンピでピンボーカルバンドはMILKとodd eyesだけなんですね!

-この時点ではそうですね。後にKillerpassやHi,how are you?は曲によってピンボーカルでやるようになりましたが。
(NINJAMANやBOUNTY KILLERに憧れてハンドマイクスタイルも取り入れたというHi,how are you?)


9.Hi,how are you? /それはそれとして
-おニャン子クラブで名越美香って会員番号9番だったじゃないですか。なのでこのコンピでHi,how are you?が9曲目になって原田さんは大変喜んだという逸話があります。
(名越美香が在籍したニャンギラス。原田さんがこの写真を見てHi,how are you?のビジュアル・イメージを着想したのも有名なエピソード)

ゴツロー:これのレコーディングの頃はまだ大学生だったんですよね、アイツ。

-リーダー京都在住時代のオリジナルとしては最後の録音になるのかな。

宅:Hi,how are you?はヒコさんがやってる「青春ゾンビ」(恐らく皆さん1度は読んだことあるはず)というブログでゴリ押しされていて、かつクイックジャパンにも原田くんの汚ねぇ部屋が掲載されていたりと、ただのローカルインディーアクトから逸脱しまくったニュアンスを放ちつつ現れたので衝撃でした。
(「QUICK JAPAN vol.109」より。4ページにわたって取り上げられた)

加藤:1年くらいの間にアルバム出しまくったの羨ましい。

よこちん:Hi,how are you?はその時期その時期のフェイバリットなものとか、歌詞にもムードにも取り込まれていて、多作なバンドならではの良さがめちゃくちゃある。

-ここら辺までの活動は結成当初からあらかじめ頭で描いてて、ほぼ設計図通りに進んだみたいですよ。

ゴツロー:そういうの考えてるのやっぱソンケ~!そして、ト~ケ~!

-これの後くらいから原田さんがソロでちゃんとレコーディングするようになったのは大きかったと思います。YouTubeで発信するだけじゃなくて。Hi,how are you?にすごく還元されてる。

ゴツロー:後に「機嫌予報図」にも入った曲ですけど、ソロをやる前と後とでミックスも含め印象が全然違いますもんね。

加藤:「機嫌予報図」ver.の方が録音は好きかも。

よこちん:この曲はライブでの定番だし、個人的にはオールシーズン聴きかえします。「機嫌予報図」の方ですが。

加藤:歌詞がいい。言葉にリズムがある。

宅:固有名詞出しまくりのリリックや箱庭的ボーイミーツガールの世界観、引用の多用等は銀杏BOYZからの確かな影響を感じます。

-Hi,how are you?というとポップやファンシーさの奥に潜むビザール感みたいなのが特色で、それこそ原田さんがフェイバリットに挙げるWEENやGORKY'S ZYGOTIC MYNCIみたいな。でも「にこいち白書」辺りのこの時期は、その成分がちょっと薄くて割りとストレートなんですよね。

ゴツロー:そうですよね。

-何となく大学卒業という心理的反映はあった気がします。あとこの頃はまだBIG FLAMEばりのカッティングは抑え気味なんですよ。

よこちん:たしかにこの時期まだカッティング抑えめですね、言われれば。笑

ゴツロー:先日、久し振りにライブ拝見したのですが、またカッティングやばくなってました!日本で5本の指くらいに入るんじゃないですかね。タイでは2本の指を入れられたそうですが。

-この頃、原田さんの歌唱力が格段にアップして、一説には「桑田佳祐のモノマネをするようになったから」とも言われています。

ゴツロー:2015年末くらいに見たライブで「バンホーテン」を桑田佳祐のモノマネでギャグとして歌うっていうのがあって、面白かったんですが、今は普通に素で桑田ですからね。
(もはや伝説!?CAR10永井さんとのW桑田によるEXTREME KUWATA TERROR)

-そして、Hi,how are you?を語るうえで肝心なこと。このコンピで唯一のドラムレス、ベースレスという異形編成。

宅:それでいて「?LDK」のジャケットがHIT PARADEへのオマージュだったり、THE SMITHSのフレーズを引用しまくったりとギターポップの素養がかなりあるとことかもありそうでいなかったなーと。
(吉田豪さんと「?LDK」のジャケット、つまりHIT PARADE風に)

ゴツロー:自分はやっぱり奏法に衝撃を受けました。ビブラートみたいな押さえ方で変な音ならすじゃないですか。変なツラで。あれ好きなんですよね。あんなギター弾く人見たことない。

-原田さんの手グセってかなりあって、尚且つ意識的に出してますよね。刻印って感じで。コード進行とかも。

ゴツロー:ですよね!アルバムごとに結構コード進行の傾向みたいなのを感じるんですけど。「ああ、この時はこれハマってはったんだ」みたいなのが面白い。

加藤:マイナー→セブンスの動き。

ゴツロー:Aメロの最後FからEの流れとか。

加藤:あそこいいよね。好き。


中編はここまで!後編に続きま~す!!