2015年4月22日にKiliKiliVillaからリリースされたコンピレーションアルバム「WHILE WE'RE DEAD. THE FIRST YEAR」を今、聴いてみるという会合をDMグループでやってみました。

参加者:
加藤さん(すばらしか)
ゴツローさん(キーマカリーズとチチワシネマ)
宅イチローさん(Anorak citylights)
よこちんさん(インディー・インタビュアー)
(ミーティングに意気込むよこちんさん)

-まずこのWHILE WE'RE DEADですが、宅さんとよこちんさんは、付属のファンジンに寄稿した当事者。加藤さんとゴツローさんは、いちリスナーとして聴いていたという事でよろしいでしょうか?

加藤:このコンピがリリースされた当時の僕は、大学三年生になりたてで音楽活動などは全くやっていない、ただの学生でした!

-すばらしか以前ということですね。

加藤:この中だと、リスナーとして聴いたことあったのはCAR10くらいですね!ガチファンだったので。

ゴツロー:僕がこのコンピを聴いたのは高2の時くらい。その時はCAR10の曲が入っているというのだけ目当てで買いました。

-凄まじいCAR10の影響力!

ゴツロー:そこから、入ってるバンドとその周りとか知って。NOT WONK、THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADES、over head kick girlには特に強い衝撃を受けて、北海道のバンドに対して興味を持つきっかけとなりました。

よこちん:over head kick girlはっしー→SLEEPINGシラハマくん→NOT WONK加藤くんという師弟関係を全部盛り込んでいるのもこのコンピのおもしろい所ですね!

宅:因みにover head kick girlを1曲目にする案も濃厚だったらしいです。

-トリビア!over head kick girl橋本さんの影響力って地方の人だとよくわからない所あるでしょうね。

宅:確かに!で、僕ですが、おっしゃる通りWHILE WE'RE DEAD.付属のファンジンに卓洋輔名義で書かせていただきました。たしか2014年の冬くらいに書いたはずです。

よこちん:オファーはこと細かな時期は覚えてないですが、自分もそれくらいだと思います!

-企画からリリースまでけっこう期間あったんですね。

宅:2015年の春にリリースされてるので、着想から1年くらいだと思います。安孫子さんがレーベルはじめることを決めたのは2014年の夏とかのはずなので。

よこちん:ステゴロについて加筆・修正して書いて欲しいみたいなオファーが来たのは覚えていて。ステゴロが行われてた時期が2013年とか2014年の年末だったりしたので。いま振り返ったところ。

-内容のリクエストがあったんですか。

宅:それは僕もありました!

-番号としてはKKV004ですが、レーベルの挨拶的な意味合いを持ったコンピですよね。

宅:確か最初にリリース決めたのはMILKのアルバムだったはずです。

-番号ってリリースじゃなくてオファー順なんでしたっけ。

宅:そうだったはずです。ロゴが001でホームページが002!

ゴツロー∶体の一部を摩擦しながら今気付いたのですが、ロゴが001というのはFACTORY RECORDSのオマージュなのでしょうか?

1.NOT WONK / Laughing Nerds And A Wallflower
-では、そろそろ1曲目から聴いていきましょう。まずはNOT WONK。初期のKiliKiliVillaは海外のシーンと呼応してたイメージが強くて、それはこれの1曲目がNOT WONKだったというのも大きいのかなと。

宅:1曲目から死ぬほどキラーチューンですよね。

よこちん:コンピの1曲目としてはとにかく心掴まれる曲!当初からアンセム感があって、いまだにみんなこの曲ライブで待ちわびているのわかるし、そして今の彼らはそれ以外で完結させるのも全然できる!

-この頃は、よくMEGA CITY FOURが引き合いに出されてて、まあ1stアルバムに歌メロがもろなのとかあったりはするんですけど。でもサウンドとしてはそこまで近くないですよね。

宅:そうですね。特にこのLaughing Nerds And A Wallflowerは現行のインディーポップ感が強いですし、MC4感は薄いですよね。当時、加藤くんはCIRCA WAVESとかよく聴いてたみたいです。

-加藤さんは英語の発音がかっこいいんですよ。言語として正しい発音なのかは分からないですけど、音として。英語で歌うべき人って気がします。

宅:加藤くんの声がめちゃめちゃ良いなーとまず感じたの覚えてます!

-この時点でのNOT WONKの知名度はどんな感じだったんですか?

よこちん:確か2013年のMATSURIあたりでNOT WONKメンバーが今のKiliKiliVilla周りやI HATE SMOKE周りとも交流ができるようになって、2014年5月のCAR10レコ発(中野moonstep)で多くの人がNOT WONKのことを初めて見たはずです。

-当時、NOT WONK加藤さんはまだ19歳とかですよね。

よこちん:SEVENTEEN AGAiNヤブさんが、かなり興奮気味に紹介していたのは覚えてます。ライブ後にデモもけっこうみんな買ってた気が。

宅:2014年のMATSURIでは、お客さんもパンパンに入るくらいには話題になってました。I HATE SMOKEからのテープが軽く起爆剤でしたね。

よこちん:自分は面白いバンドだなとその時、思いましたが、全体はそこまで見えていなくて、I HATE SMOKEのテープでかなり聴き込みました。でも、たぶんこういう曲じゃなくてそれこそパンクの簡単な枠とかではおさまらない音になっていくんだろうなと思ってましたし、そのバックボーンというか聴いてきた洋楽なんかから色々と感じてましたね。

-そして、今現在まさにそうなっていると。

宅:新しいアルバム早く聴きたいなあ。

よこちん:当時のライブではKiliKiliVilla新年会かなにかでギター周りの機材トラブルで全然うまくいかなかった時の加藤くんの悔しそうな感じと、その後のふりきったライブがすごくよかったの覚えてます。

宅:ああ、機材トラブルは2014年末のKiliKiliVilla設立パーティーですね。あの加藤くんがステージ上で叫んで取り乱していたので滅茶苦茶印象的でした。勿論、復旧後の爆発的なライブはヤバかったです。

よこちん:あとはフジくんのコーラスワークや開脚、アキムくんがEARTH,WIND & FIREとか好きなのかっていう意外性とか。
(フジさんの開脚)

-アキムさんのアースの全面プリントTシャツめっちゃ印象に残ってます!お父様がKING CRIMSONとかジャズがお好きな方でその影響だと言ってましたよ。


2.SEVENTEEN AGAiN / リプレイスメンツ
-続いてSEVENTEEN AGAiN。こちらもアンセムと言っていいでしょう。4人時代の完成形。

宅:タイトルの「リプレイスメンツ」というワードが彼らのキーワードになっていく感じが個人的に面白いです。

よこちん:「少数の脅威」前後のモードから今へ繋がる完全なるキー曲ですね。

-そのリプレイスメンツという曲名 、THE REPLACEMENTSにALEX CHILTONという固有名詞を使った曲名があるので、それに対する洒落というか遊びみたいに思ったのですが。

宅:ヤブさんのことなんで必ずそのオマージュ感、とんち感は内包してると思います。
(掟ポルシェさんとのトークも好評だったヤブさん)

-この曲はどの辺のバンドが下敷きになってるんですかね?

宅:確か前に元ネタ聞いたんですけど失念しちゃいました。現行のインディーポップであることは間違いないんですが。

よこちん:自分も元ネタ的なのは完全に忘れましたね。

加藤:UKを感じますね。USというよりは。

-そうそう。リプレイスメンツなんですけどUKなんですよね。ベースラインとかNEW ORDERっぽくて。

加藤:僕もNEW ORDERを感じました!音像のリズムの処理とかに!

よこちん:USよりUK、NEW ORDER感は自分みたいなのでもたしかに感じますね、わかります。

宅:この曲はハンドクラップにエフェクトかけまくってたり、ヤブさんによるセルフミックスが施されていたりと、彼らなりの実験的試みもいかされてると思います。最初に聴いた時は、新しいSEVENTEEN AGAiN感じました!

よこちん:自分も当時、新しいセブアゲ感を感じました。

宅:セブアゲって略、パリピ感ありますね!

よこちん:セブアゲって略し方はあえて使ってるんですが、もともとkillerpassはやしっくが断固そう呼んだりしてたんだかしてないんだかで、killerpassの後輩の友達が使い始めたので自分もある時期からそうしてます。パリピ感。
宅:僕も使っていきます。セブアゲ⤴️

ゴツロー:IKKOさんの趣もありますね。セブアゲ~!

宅:「コンビニじゃ使えないカード」とか「アスファルト野郎」とか、ヤブさんの言語センスの進化を感じた曲でもありますね。

よこちん:「コンビニじゃ使えないカード」ってフレーズは初めてライブで聴いた時からストンと自分の中で鮮明で、今でもこの曲はついつい口ずさむというか歌詞なぞれるくらいですね。というかそれくらい肝な曲として彼らの中でやり続けてるのか。


3.THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADES / SILENT MAN
-3曲目はTHE SLEEPING AIDES & RAZORBLADES。このコンピで「他の曲も聴いてみたい」と一番思ったバンドです。曲の中に情報量が多くて、それを詰め込むセンスも良くて。

よこちん:スターウォーズとかアメコミ系とかメンバーの大半が好きなのもおもしろいですよね。

-そこ重要だと思います!ちゃんと自分達が愛してるカルチャーを発信してるのが素晴らしい。付属ファンジンの自分達のページも偏執狂っぷりが全開で。
宅:バンドの時期的には、ファーストは出ていて、セカンドを録音している、という報が出てる頃でした。

よこちん:当時から大人気で、といってもごく一部ではあるんですが、レーベルもみんな出したいって言うし、ライブも都内でやれば人は集まるし、新しい曲をみんな待ち望んでるタイミングでしたね。

宅:そして、2014夏のカセット、2014秋の7インチと高クオリティの作品を連発した直後にこのコンピだったので、そのポテンシャルにみんな震えあがって。

-遠藤ミチロウが「ネオ・サイケとか好きっていうのは、関東から北の地域、雪を見てる奴の世界」という見解を示してて、この曲をネオ・サイケというのはちょっと違うかもしれませんが寒い地域から出た音って感じは凄くするんですよね。
(1991年 遠藤ミチロウの発言)

加藤:環境と音楽は超関係あると思います!

よこちん:環境と音楽、たしかに。

宅:彼らの中では異色の曲ですよね。シンセばりばりで。THE CURE感ある気がします。

加藤:躊躇なくシンセ使ってていいですね!シンセって使うの躊躇しちゃうんですよね、絶対。でもこの曲はシンセサイザーってもの自体が世に出てきた時の使い方感がある。「こういう音でるやつ発売したし使ってみるか」的な。

よこちん:この、彼らを連想できるイメージの音ってすごくいいですよね。細かく言えば曲ごとに違うんですが、これはほんと躊躇なく好きなことやってる感!


4.SUMMERMAN / Littleman
-続いては井の頭HOODの雄、SUMMERMAN。

よこちん:当時、カセットテープは出してて、反応もけっこうあって、吉祥寺のtoosmell recordsのコンピとかI HATE SMOKEのコンピとかには参加してたので周りからはけっこう認知されてたと思います。WHILE WE'RE DEAD.と同じくらい(?)にfallsとのフレキシも出してたと。

-立ち位置、状況としてはそんな感じだったんですね。

よこちん:ただ吉祥寺の自分たちのシーンみたいなのも大学とスタジオ周りでありつつ、十三月周りとか5000周りとかとも絡み合ったんでKiliKiliVillaからはなかなか意外でしたね。

-加藤さん、レコード屋の店員目線だとSUMMERMANはどの棚に置きます?

加藤:indie / alternativeに置かれると思いますが、コメントに西海岸の風を感じる的なこと書いてしまいそうです。BREEZEN'的な。

宅:エモリバイバルのバンドに共感、共鳴しながらも、技術的に全然エモリバイバルできてない未熟さが彼らの内包する熱さや勢いと相乗して良い感じに青くさくオリジナルなインディーロックになれてるところがスゴいと思いますね。

よこちん:たしかこの曲はDOWSINGとかにどこかしら影響されたかもみたいなことはナカザワ(gt)が言ってたかもしれません。もっと彼らの爆発的な方の曲もあったけど、今考えると選曲意外ですね。

-確かにこの後に出た1stを聴くと「何でこの曲にしたんだろう?」って思いますね。

宅:SUMMERMANはKiliKiliVilla福井さんが凄く気に入ってた記憶があります。

よこちん:その福井さんをはじめ、KiliKiliVillaサイドが気に入ってたという説はインタビュー読み返すとあったかもしれませんね、この曲。
宅:結成して、すぐに注目されて、アルバムリリースの話も舞い込んでトントン拍子だったと思うんです。紆余曲折ありつつKiliKiliVillaとはアルバムリリース後離れてしまいますが、ちゃんと自分たちで自主レーベル作ってリリースして、さすがパンクバンドだなーと。

よこちん:最近はまた新たな時期に突入して、いなたい曲が増えていますからね。おもしろいですよ!

宅:そうですね。もっと色んなところで、色んなバンドとやったらもっともっと面白くなると勝手ながら思ってます。


5.over head kick girl / The sunrise for me
-このコンピ及び当時のシーンの流れとして「北海道」というのは大きなキーワードで、その中で音楽的にも人脈的にも最重要と言っていいのがover head kick girl。

よこちん:オバヘの参加は最高でしたね。日の目を浴びて編集盤と新曲を聴けるなんてと。「KiliKiliVillaよい仕事した!」と思いましたよ。

-実際、日の目を浴びたことによって衝撃を受けた当時のゴツローさんのような高校生も居たわけで。

よこちん:2010年頃かな、BASEBALL KNUCKLEとのスプリットとかデモで、あのセンスは知っていたんですが、いかんせん北海道だし活動感もいつからかなかったので、全国のまだ知らない方からしたら鮮烈だったんじゃないかな。

-今もそうですが、活動状況はやはり不透明でしたか。

よこちん:一回早々と解散したのち、2012年のMATSURIあたりで復活して、そこから仲間が企画で呼んだりしたらぼちぼちライブしてるって感じじゃなかったでしたっけ?

加藤:ドラムのフレーズが歌心あっていい!そもそも曲がいい!

よこちん:曲がたまらなくいいですよね、展開とか。メロディック好きなら反応してしまうというか。

ゴツロー:展開やばい!

宅:ライブは割りと危うくて、アンサンブルが壊れかけちゃう瞬間もあるんですけど、そこが彼らの持つ刹那的なサッドメロディックパンクのかっこ良さを引き立てる側面もあるというか…。転びそうになりながら疾走する絵が浮かんできてグッとくるんですよね。

よこちん:イモヅラは、オバヘを初めて聴いたとき、連想したバンドとかいましたか?

-アンダーグラウンドな方向に特化してからのsnuffyのバンドとかですかね。UKメロディックをベースにDCのエッセンスも入ってて。

よこちん:あー、やはりそうですよね!自分はそれこそ彼らがRECESSとかLEATHERFACEとかSPRAY PAINT好きなのを同時期的に知りつつといった感じだったので。

ゴツロー:最初アルペジオから始まってるのに、最後開放弦バーンって終わるところとか、吉村さん(bloodthirsty butchers)を彷彿とさせられました!

-over head kick girl世代の北海道パンクシーンの人脈マップを作って欲しいですね。メンバーとかかなり重複してますし。

よこちん:北海道のバンドはドラムとか臨機応変すぎますからね、未だに。この日のライブは◯◯がやりますとか、誰が弾いてた時代の音源だとかややこしすぎます。バンドの行ききが。

ゴツロー:どんだけ~!

よこちん:ここで宅さんがオバヘのこと、めちゃめちゃまとめてくれてますね。

宅:この記事を創る際にも感じたんですが、北海道のローカルパンクバンドからの信頼が尋常じゃなくて、みんなめちゃめちゃ熱をもってるなーと。

よこちん:北海道のここら辺のバンドの中では、はっしーたちは高校生くらいからヒーロー的な存在だったってよくみんな言いますよね。
(左端の帽子を被った人物がはっしーこと橋本さん)

ゴツロー:とんでもなく影響力を持ったバンドなんですねー。

よこちん:あと、安孫子さんもover head kick girlのTシャツ着すぎてます、お気に入り。こないだもそうでした。


以上で1曲目から5曲目までの前編終了です。引き続き中編もお楽しみに!