ギターの弦高。これが低いとタッピングの反応は良くバシバシ決まるし、フルピッキングは軽いタッチでスイスイピロピロ、チョーキングなんかヒョイヒョイ弦を押し上げられます。これだけで相当なアドバンテージがあり、弾くだけであれば低い弦高は速弾きに向いていると言えます。
しかしながら、演奏を聴かせるという点ではどうでしょうか?弦がビビり易いことで雑味が入り、ハリと粒立ちが弱く、平面的でペラッとしており、良いサウンドかという点では少々難があるように思います。
また、弦高を低くするだけというお手軽な設定の反面、より複雑な音作りやミュートテクニックが求められてしまい、大きいデメリットも伴なっている。そんなように思えるのです。ということで、今回は弦高の低いギターのメリット・デメリットを解説します。
1.弦高を低くするデメリット
(1)弦高が低いと弾きやすくなる仕組み
なんで弦高を下げるとテンション感が弱くなるかというと、前提としてサドル部で折れ曲がる角度によって、テンション感が変わるからです。サドルの高さが高いと、この角度が狭くなってテンション感が高くなります。逆に、サドルの高さが低いと、角度が広くなりテンション感が低くなります。詳細はO2ファクトリーのページをご参照ください。
【リンク】www.eonet.ne.jp/~o2factory/sr.html
(2)デメリット
弦高が低くなるとテンション感が低くなり、タッチが軽くなる半面、弦がダブつき暴れやすくなり以下のデメリットを伴います。
・ビビり(タッチノイズ、離弦ノイズ)が多くなる。それに伴いミュートの難度が上がる
・上記によりダイナミクス表現が狭まる等、小さくまとまりすぎたプレイになってしまう。
・音のハリが弱く、単音の粒立ちが悪い
・ピッキング時のピック離れが悪くなり、音にキレがなくなる。
サウンド面の他、アドバンテージとしていたプレイ面でも制約やデメリットが生じてまいます。
2.発生するビビりの原因は1つじゃない
ビビりというと多種多様に原因がありますが、今回は弦高が低い時のビビりに焦点を当てて分析してみました。弦高を下げてプレイしてみると2つの異なる要因によりビビりが生じているように感じます。
(1)弦高が低すぎることによる明らかなビビり(弦高:激低)
単に弦高が低いため、押弦したフレット以外のフレットに弦が干渉する現象です。これが一般的なビビりです。これは両手のミュートでどうにかなるものではなく、弦高を上げることでしか対処できません。さすがにここまでの設定にされている方は少ないと思いますが、比較的強めに弾いた時にちょっとビビる位であれば許容しているという方は多いのではないでしょうか?
(2)弦のテンション感が弱いことによる暴れ、ダブつきによるビビり(弦高:低)
これは(1)のように通常弾く分には明らかなビビりは感じないけど、演奏中に暴れを感じるパターンです。このビビりは弦のテンション感が弱い事により、タッチノイズや離弦ノイズ(押弦後に弦を離したときに発生するノイズ)が発生しやすい状態になります。
離弦ノイズは、弦高が高い場合は振幅が安定した状態を保ちながらフレットを離れるのに対し、弦高が低い場合は振幅が暴れながらフレットに干渉しつつ離れていくため、濁った音になります。通常のタッチノイズは右手のミュートで大抵カバーできますが、この離弦ノイズは対処が難しいです。
※上記の現象は弦高が低くなくても、ネックが反っている、一部のフレットが極端に減っている等、別の原因でも発生します。
3.弦高を上げることのメリット・デメリット
3-1.メリットとデメリット
(1)メリット
・弦がダブつきにくいため離弦ノイズが減る。それによりミュートの手間も軽減される。
・弦がダブつきにくいため、ピッキング時のピックの弦離れが良くなり、キレが出る。
・音にハリが出て、粒立ちがよくなる。
(2)デメリット
・弦のタッチが硬い。チョーキングが硬く、タッピングも音が出にくい
・弦高を過ぎるとピッチが♯してしまう
・フルピッキングでは高フレットで弦をとらえにくい
超高速フレーズになるととりわけリズムで聞かせるものなんかは一音一音のキレがないと団子の波になってしまい、自分でも何弾いてるか分からなくなりがちです。弦高を高くすることでこれが解決する可能性があります。また、個人的には速弾きにおいてミュートが楽というのは相当大きいメリットに感じます。
3-2.適正な弦高の目安はどれくらい?
ネックのスケール、使用している弦の太さ、ギターの精度にもよるので一概には言えませんが以下が目安になると思います。これらは弦高だけでなく、ネックの反り具合でも変わりますので、必ず合わせてチェックしてみてください。
・速弾きしてもタッチノイズ、余弦ノイズ、離弦ノイズを感じない
・通常のピッキングの強さで弾いてもビビらない
・ブラッシングしてもダブつかず、キレが良い。
4.弦高が低い状態で良い音を出すには
2章では弦高:激低の状態では対処不能ですと書きました。なので激低の人はもう少し弦高を上げた方が良いと思います。どうしても低い弦高でいい音を出したい場合は、ハイエンド系の精度の高いハイエンドギターを購入するか、トレモロスプリングの種類や、かけ方でもテンション感、音質が変化します。トレモロスプリングの調整については以下の記事を参照ください。
また、弦高が低いことによるメリットは、個人的にチョーキングでのテンション感が緩い事くらいで、フルピッキングではむしろ弾きにくさを感じます。当ブログでは身体的な速弾きの原理についても解説しておりますので、併せてご参照ください。