ノイエ・ハイマート とは 新しい故郷 という意味だそうです。
難民が一縷の望みをかけて目指す安住の地、という意味と捉えました。
(画像は出版社webより)
概要(新潮社webより)
戦禍や迫害を逃れ、住み慣れた家、故郷を離れて、難民となった人々。日本とシリア、二人のビデオ・ジャーナリストの物語を軸に、クロアチアの老女、満洲からの引揚者、トルコの海岸に流れ着いたシリア人の小さな男の子など、さまざまな難民たちの姿を多様な形式の20章で描きだす。今どうしても書かざるを得なかった作品集。
民の命と生活を守るはずの国家が、いつのまにかそれを略奪する存在になる。
ジャーナリストの目で語られる難民の物語はどれも辛くて凄惨ですらあります。
けれども、その厳しい現実を生き、死んでいく人々の物語がどこか超越していて美しくさえ感じられるのはやはり、作家 池澤夏樹 の力量でしょうか。
モロッコやトルコの砂浜に流れ着いた子供たち
砂漠の検問所で今日も繰り返される暴行の数々
満州からの引揚げ途中で命を落とした末の子の白い僅かな骨
クロアチアの小さなお婆さんに買ってあげたバスの切符
そして、ウクライナとガザ
・・・次々と風景が浮かびます。
泣いても笑っても、人は生まれて死んでゆく。
人間が人間を追い詰める不条理が、(この本の表紙のように)なぜか風景の一部と化して悲惨さを押し隠してしまうのでした。
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満州の人々の引き揚げの章では、同様に台湾から引き揚げた母家族のことを思いました。
”接収”で何もかも失い、引揚げ船に乗り込んだ母家族の身の上は、まさしく”難民”。
ただ、行き先は”祖国”であり、無事日本にたどり着きさえすればなんとかなった点で、”難民”が背負う十字架はなかったはずです。
特に台湾からの引き揚げ者は、満州に較べて命の危険は小さかったかもしれません。
引き揚げの様子は↓
引揚げ船に乗る | ☆ Pingtung Archives ☆
♬引揚げ船で ♬シェラザード | ☆ Pingtung Archives ☆
この引揚げ時に乳呑み児で、引揚げ船の上で死にかけた叔父は、きょうだいの中で一番早く60代で亡くなりました。
母からはじめて「台湾」のことをきき、上記の記事を書きながら、叔父が弱かったのはこの時の栄養不足が原因じゃないかしら・・・と思ったものです。
CCR 雨を見たかい