養老先生と奥本大三郎先生(フランス文学者で「ファーブル昆虫記」の訳者、ご自身も無類の虫好き)の対談本です。
(画像はファーブルと日本人 / 養老孟司【著】/奥本大三郎【著】 <電子版> - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア (kinokuniya.co.jp)より)
内容(ファーブルと日本人 養老 孟司(著/文) - かや書房 | 版元ドットコム (hanmoto.com)より)
ファーブルが誕生して201年目の今年、解剖学者の養老孟司、フランス文学者の奥本大三郎、
知の巨人・二人が、「ファーブル昆虫記」「ファーブルの人生」を皮切りに、「日本人論」
「環境問題」「教育問題」「AI」「老後問題」「経済」など、日本のさまざまな問題について語り合う。
いったい日本人とはどんな国民なのか?
自然から離れ、体で感じるという感覚を失くした日本人は、これからどこへと向かうのか?
養老先生は、カール・ポパーという哲学者の提唱する「3世界論」で世界を捉えます。
世界1:物の世界
世界2:人の心の世界でみんなに共通してるもの。いわゆる一般的な科学。
世界3:個人にしかない心の世界
ファーブルが昆虫を見ている時は、まず「世界1」。それを「世界3」のファーブルの心が見ている。そいういう意味で、ファーブルの昆虫への対し方は、誰でも理解できる「世界2」ではなかった・・・
養老先生と奥本先生は、この「3世界論」の切り口で、目の前にある日本と地球の課題を斬ります。
端的に言えば、
虫の数が、種類が減った。
昔の子供は暇で虫でも観察するか追いかけるかしか暇つぶしの手段がなかったけれど、今の子は分刻みのスケジュールとスマホに支配されて虫どころじゃない(そもそもいないけど・・・)。
・・・と嘆き、
- 日本のGDPがドイツに抜かれて4位になったのは誇らしい
- (ファーブル的世界観の日本が)環境破壊にブレーキかけたのは自慢できる
- そもそも人口が1億二千万人の国でGDP3位はおかしい
- もっとほかのものさしで幸福度をはかるべき
・・・と続く。
そして、日本では愛されている「昆虫記」は、本国フランスではたいして読者も集めず、ファーブルは奇人・変人扱いだった。
ファーブルの昆虫への向かい方は、世界1 を 世界3 でとらえる日本人にこそうけいれられた。
というこの本のテーマにつながります。
奥本先生が館長を務める「ファーブル昆虫館」(千駄木にあります)は素敵な場所です。
ファーブルの生家が再現されていたり、いろいろな さわれる 昆虫の標本があったりして虫好きが楽しめることうけあい。
(画像はお借りしました)
娘は幼少時から昆虫好きで、結構大きくなるまでファーブル昆虫塾のメンバーでした。
コロナ禍で行けなくなるまで大隅半島の某所で虫捕りに励みました(←昆虫塾ではなく家族で)が、そのほんの10数年の間だけでも虫の数が激減していく(←それも ミヤマクワガタやヒラタクワガタなどありふれた虫たち)のを肌で感じたものです。
ムシが生きたくない世界は人間も生きたくない世界。
少子化が止まるわけない、と養老先生。
ここまで来ちゃって、はたしてあともどりなんてできるのでしょうか?