家にあったので手に取った一冊です。
ヒトを含む哺乳類の生体に存在するAIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)というタンパク質を発見し、猫の腎臓病治療薬の開発を進めている宮崎徹氏が、東大医学部の学部生時代に解剖学の講義を受けた恩師で愛猫家としても知られる養老孟司氏と語り合う「夢の対談」。
対談の内容は猫の進化の謎に始まり、コロナ、昆虫の完全変態の謎、ひいては科学や教育の諸問題へと発展します。
対話のそこここに、お二人のニッポン病(縦割り、素っ頓狂な発想を排除する、人が言うことにギモンを持たない、そしてお金がない)への危機感が漂います。
今までも、養老先生は「虫」や「解剖」を切り口にしてこんな状況に警鐘を鳴らしてきましたが、さすがにトーンダウンしてきたなと感じます。それは先生のお年によるものなのか、あるいはもはや諦念の境地なのか、気になるところです。
本の中で紹介されたAIMの情報
宮崎氏が研究しているAIMは、目下ネコの腎臓病治療薬として実用化を目指していますが、将来的にはヒトにも応用されそうです。
体の中にゴミが溜まると腎臓病、神経変性疾患、肝臓がん、認知症などになる。
そこでAIMというゴミマーカーを使ってゴミをマクロファージに食べてもらい、体の中のゴミ屋敷化を予防する。
これでヒトの病気は激減する(結果寿命が延びる)はず、らしいです。
マクロファージがゴミを食べる様子
免疫細胞が細菌を追いかけ破壊する様子を画像で見ることができる。
— # hii (@hii29227409) June 29, 2022
マクロファージは人間を含む動物に存在する細胞で体にとって異物や毒となるバクテリア 死んだ細胞の残骸などを積極的に捕捉し消化する能力がある。"マクロファージ "という言葉
はメチニコフの造語である。 pic.twitter.com/psHGWQEjwJ
ちなみに、マクロファージは空腹を好むらしいです。
空腹のときに活発にゴミ掃除してくれます。
個人的には、養老先生の「完全変態する虫の幼虫と成虫は異なる生物なのではないか」との仮説に興味を持ちました。
幼虫が蛹になってその中がドロドロになって、ある日美しい成虫として飛び立つ姿に、素人なりに妙な神秘を感じていましたので。
この仮説に迫るために宮崎氏は、ショウジョウバエの幼虫、蛹、成虫のゲノム解析を行いました。
結果、仮説に可能性はあるものの、その証明にははるかに及ばないということがわかりました。
対談中、養老先生がリファーした(面白そうな)本