通信手段 | ほんとうのピコットさん

ほんとうのピコットさん

子どもの本屋「夢文庫ピコット」店主です。
タイトル「ほんとうのピコットさん」については、
http://ameblo.jp/pikot/archive1-200711.html をどうぞ!



少し前のことですが、

例によって時間の余裕なく車を走らせていて、

右折車線の赤信号で、

お客様からの着信に気づきました。



と、その時、




ピ~ポ~ピ~ポ~

緊急車両です!

ピ~ポ~ピ~ポ~

緊急車両です!

道を開けてください!




というアナウンス。

夕方の渋滞時間、

車でギッチリ詰まっている交差点に、わたしは居ます。

大変!

どうやって道を譲ればいいのだ?


携帯を放り出して、

交差点付近の車のみなさんと一緒に、

あっちへちょこっと、こっちへジリジリと動いて、

何とかやっとこさ、1台分の幅を空けたところ、

その救急車は通り抜けていきました。


交差点は平穏に戻り、

わたしも右折を終わって、再びフル走行モードに。

そこで携帯の存在に気づき、

あれ?通話中になっている?と、☎マークをオフにしたところ、

その直後から、

着信メロディが、鳴って鳴って鳴って鳴って鳴って・・・。


急いでいるけど仕方ないので、

路肩に車を寄せて電話を取りました。

すると、電話の向こうは件のお客様のすごく焦った声。


だいじょーぶですか?

だいじょーぶですか?

ピーポーいってましたけど、大丈夫ですかっ?!


え?

わたし?


スマホって、どうしてだか、

着信をちょっと触っただけで通話状態になるんですよね。

急いで道を譲ろうとした時着信のお知らせに触れたらしく、

意図せず、救急車の通過を、

お客様に実況中継しちゃった・・・。ペコッ


ケイタイを持つようになって、かれこれ20年くらいでしょうか。

お店にいれば当然お店の電話が優先だし、

ケイタイとはあんまり親しくなれず。

わたしのケイタイは、

自分が掛ける時だけ手にする、

持ち歩く公衆電話だよと、変な自慢をしています。

そして、

うっかり触われば↑のような事態を引き起こすのです。


お互いがどこに居ようとも逃れられない お話できるケイタイ。

これって、どうなんでしょうかね?

うまく言えないけれど、

ここまで鮮明にお互いが見えてしまうこのツールは、

たしかに便利この上無いが、

あまりに距離が無さ過ぎてどうだかな・・・と、

わたしには違和感があるのです。


人と人の間は、

ちょっとだけ距離があって、

そこをいろんな思いで埋める方が、

豊かな関係が生まれるのではないかな?

と、その引き合いに出すのが、この絵本。



tomodatitte

ともだちって だれのこと?

岩瀬成子・文 中澤美帆.絵 佼成出版社 本体¥1300.



テンの家に遊びに行ったねずみは、


友だちの家に行くので るすにします


という貼り紙を見て、

友だちって、僕のことだろうか、

それともほかの誰かのことだろうかと悩みます。


その時のねずみの、

ざわざわする気持ちや、

ともだちって誰なのか突き止めようとする複雑な気持ちも、

ケイタイがないからこその心の動きです。


さらに、こちらの絵本では、

その貼り紙さえもありません。



sinsetunatomodati

しんせつなともだち

方軼羣・作 君島久子・訳 村山知義・絵
福音館・本体¥800.




友だちがお腹を空かせているのではないかと、

たべものを相手の家の戸口においてくる動物たちのお話です。

素朴な展開ですが、

読み終えた時には、心が温かくなります。




動物たちは携帯は持ってないもの、

だなんて、

言わないでくださいね。


物を持つことが心を豊かになるかどうか

・・・という議論をここでする気はありませんが、

ピ~ポ~を中継されて肝を冷やしたウチのお客さまと、

テンの貼り紙で心が揺れたねずみとを比べると、


わたし、テンに負けたわ、

という気分になります。 (^^)/