初音は朝一番の新幹線に乗った。
まだ日が昇らず暗い窓の外を見て。
金持ちやったら。
天音ももっと苦労せずにやりたいことたくさんできたかもしれん。
おれ。
あいつの運命変えてしまったんかな。
まちごうてたんかな。
何度も何度も考えたことをまた今も考える。
真緒は毎日初音になにか仕事上での用事がないか探してしまう自分に気づいていた。
なんも。
ないなあ・・
そちらは寒いでしょうね
とか。
そら寒いでしょうよ。12月だし、山の中だし。
忙しいですか?
そら忙しいでしょうよ。お正月用に野菜の出荷も最盛期だろうし。
スマホを手にしてそんなことばかり考えてしまう。
そんな時、ふと祐介のことを思い出した。
急に現れた彼に動揺して、もうとにかく責めることしかできなかったけど。
わざわざ両親に会いに来るなんて。
勇気がいっただろうな。
もうパリに帰ったんだろうか・・。
お母さんの話ではパリで食品関係の仕事立ち上げて。
あの彼と一緒に仕事してるらしいけど。
本当に大好きな人と一緒に暮らして。
一緒に仕事をして。
外務省のエリートだったころよりもきっと幸せなんだろうな。
どんな暮らしでも愛してる人と一緒にいられるだけで。
もう彼が好きだったころの自分の気持なんか全く思い出せない。
あんまりな仕打ちをされたけど
それももうどうでもよくなって。
そう思ったら。
スマホのメールを開いていた。
祐介はパリに戻るために空港にいた。
そこにメールの着信を感じ開いてみた。
「真緒・・」
その名前に驚く。
『メルアド変わっていなければこのメールが届くはずと思い書いています。
祐介さんがいきなり現れて動揺して怒り出してしまってごめんなさい。
冷静になって考えてみればウチの両親に会いに来るのも、本当のことを打ち明けることもどれほどの勇気だったかと思います。
私が真実を隠してほしいと言ったのはとにかく自分の保身のためで家族に知られたくなかったからです。
あなたも苦しかったでしょう。なんでもっと早く言ってくれなかったの?と責めたい気持ちもあったけれど。
エリートなりのプレッシャーもあったはず。あなたはとてもやさしい人だからご家族にも言えなかったでしょうし。
3年が経って今ようやくあなたの気持ちがわかるようになりました。確かに傷ついたけど何となく誰も悪いわけではない気がして。 立ち上げたお仕事頑張ってください。
私も今ホクト関係の仕事ですが何とか頑張ってやっています。
何もできなかったあの頃の私から少しは大人になったかもしれません。
お元気で。そしてお幸せに。 真緒 』
長いメールだった。
祐介は目を潤ませた。
メールを送って10分ほどで返信が返ってきた。
『独りよがりの思いでご両親を訪ねてしまい。申し訳ありませんでした。まだまだ会社も立ち上げたばかりで軌道にも乗っていませんが外務省にいたころよりも楽しく過ごしています。
ごめんね。
そして
ありがとう。きみの幸せもずっと祈っています。』
胸のつかえがスッとなくなっていくのがわかった。
何かと用事をつけて初音に連絡を取りたい真緒でしたが・・
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