「ちょっと!真緒!どうしたの!」
その格好で家に帰ってきた姿を見てゆかりは驚いた。
「す、すみません・・靴を・・」
初音はそれで階段を上ってきたので息絶え絶えだった。
「え? あ、はいはい・・」
ゆかりは慌てて真緒のヒールを脱がせた。
「し・・寝室は・・」
「えっとね。 2階、」
と吹き抜けの2階を指さされて
「に・・2階・・」
ちょっと気が遠くなった。
「危ないから。ここのソファで寝かせましょう。」
ゆかりがソファを指さしたが
「けっこう飲んでて。落ちたりしたら危ないから。・・何とか2階に上がります・・」
一度おんぶし直して階段を上がり始めた。
ものすごい時間をかけて2階に上がって彼女の部屋についた。
先に入っていたゆかりが部屋の電気をつけてベッドの掛け布団を開いていた。
ようやく彼女をおろして
「はあああああ、」
初音は両手を膝についた。
「ごめんなさいねえ。 ホントいい年して飲み過ぎて・・」
ゆかりは初音に何度も頭を下げた。
「いえ。ぼくが・・食事に誘って・・。真緒さんを飲ませすぎてしまったので、」
身体を反らせて腰を伸ばした。
飲み過ぎてしまった娘の気持ちを慮った母は。
「・・話、聞いた?」
初音の顔色を窺った。
「まあ、」
首をコキコキさせた。
「あたしも。今日彼から聞いて。びっくりした。もう離婚から3年くらい経って。こんなことがあったなんて思いもしなかった。真緒は・・世間知らずで飽きっぽいところがあるから。祐介さんに愛想つかされたか、奥さん生活に飽きちゃったのかなくらいにしか思ってたし、」
「すごく。まっすぐな人なんですよね。真緒さんは。正直で、」
初音はぐうぐうと寝息を立てる真緒の寝顔を見た。
「今の世の中。いろんなことあるんだなーって思った。祐介さんも家族にも言えずにずっと苦しかったと思うの。すごくエリートで非の打ちどころのない人だったけど・・。誰にでも悩みってあるのねって。あたし、昔女優やってたでしょ?この世界・・昔からまあなくはなかったから。そういう人がいても別に驚かないけど。祐介さんの家、名家だったし。言えなかったんだろうなあって。真緒のこと騙そうとかカモフラージュにしようとか思ったわけじゃなくて結婚すれば変われるって信じてたのよね。二人とも・・真っすぐっていうか、素直ってうか。」
ゆかりははあっと深いため息をついた。
「真緒にはかわいそうなことになったけど。なんか誰も悪くない気がしてね、」
その言葉に初音は小さくうなずいた。
真緒を自宅まで送り届けた初音は彼女の母・ゆかりの思いを・・
↑↑↑↑↑
読んでいただいてありがとうございました。よろしかったらポチお願いします!
で過去のお話を再掲しております。こちらもよろしくお願いします。