「志藤はさあ、お父さんがホクトエンターテイメントのエラいさんなんだろ? やっぱ都立より私立の方がいいんじゃない?」
ななみがまだハンバーガーを半分しか食べていないのに、彪吾はもうドリンクを残すのみになっていた。
「でもー。 お姉ちゃんが私立行ってるし。 たぶん・・大学も私立になると思う。 下に弟と妹が3人いるしね。 いくらお父さんが稼いでくれても。5人とも高校大学私立は。 大変だと思う、」
誰に教えられたわけではないが、ななみは5人姉弟に育つ中で家の経済事情も考えるようになっていた。
「そっかあ・・。」
「でも。 お医者さんって・・いいよね。 あたし小さい頃からずっと喘息で入院もしたりしてたから・・。 本当に病院のお医者さんや看護師さんに救われたっていうか。 大きくなったらきっと喘息も良くなるからねってずっと励ましてくれた。 その通り、今はだいぶ良くなって・・」
ななみは笑顔を見せた。
「・・ちっちゃいころは。 お医者さんになりたいなあって。 思ったりしたなあ・・」
遠くを見るようにつぶやいた。
「え? ソレ。 ぜんぜん叶う夢じゃね?」
彪吾はシェイクを飲みながら普通に言った。
「は?」
「おまえのアタマなら。 医学部とかいけそうじゃん、」
「・・医学部・・?」
ななみはきょとんとした。
「おれはさあ・・ 正直、医者にはなりたくない。IT極めて世界に通用するようなソフト開発とか。親は医者になって欲しいって思ってるみたいだけど。」
医者・・
ななみはずっと思い出すことがなかった自分のぼんやりとした『夢』が蘇ってきた。
「どしたん?」
急に黙り込んでしまったななみに彪吾は顔色を窺うように言った。
「え? あ、ううん・・。 水上くん、パソコン得意って前に言ってたもんね・・」
「うん。 プログラミングとか。 めっちゃ楽しい。 ホントはそういう高校に入りたい、」
「ダメなの・・?」
「・・なんせ。 中学受験で第一志望合格確率80%以上だったのに落ちたし。しかも滑り止めにも落ちたし。。小2の時から進学塾行ってたのに。塾で一緒のクラスだったヤツらはすごいトコばっか受かったのに。 おれだけ・・どこも受からなかった。」
彪吾はおかしそうにアハハと笑ったが、ななみは笑えなかった。
「お母さんは頭抱えちゃうし。お父さんは口利いてくんないし。 でも・・もしおれそこの中学に受かってたら・・たぶんなんも考えないで親の思うように医学部受験して医者目指したかもな。 なんか・・なんも考えてなかったから。」
シェイクを飲み終えて紙コップをぎゅっと握りつぶした。
同級生の水上彪吾も進路について悩んでいます・・
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