はあ・・
やっぱり前の塾と違って時間が長い分キツいな・・
ななみは授業を終えてふうっと息をついた。
時計を見ると夜8時。
もう10月で受験までもう数か月。
嫌でもギアを上げて行かないとならない。
「なー、模試、どうだった?」
後ろの席から声を掛けられた。
「あー・・まあ、」
言葉を濁すと
「どうせ。 おまえはA判定の嵐だろうけどなーー、」
その彼は学校でも同じクラスの
水上彪吾
「・・あたし。 内申期待できないから。 もう試験で頑張るしかないから、」
苦笑いをした。
「でもさー。好きで欠席してるわけじゃないのにさー。 理不尽だよな、」
帰り道なんとなく一緒に帰った。
「・・3年生になってからは一学期に2~3日しか休んでないんだけど。1年生の頃はギリギリって言われたし。」
ななみはため息をついた。
「病気だもん。 しゃあないじゃん。 でも・・ 内申に重きおいてる都立は難しいんじゃねえ? おまえの学力なら普通は推薦でもいい所行けそうだけど、」
彪吾はななみの少し前を歩いて振り返った。
「・・推薦は。 諦めてる。 まず・・欠席日数でハネられる、」
ななみは苦笑いを返した。
ファストフード店の前を通りかかった時
「な、ちょっと食べていかない?」
彪吾は笑った。
「え・・」
「腹減った、」
「・・でもー。 お母さんが夕飯用意して待ってるし、」
「連絡してさ。 明日食べればいいじゃん。 おれはいつも家帰っても誰もいないから、 一人飯めんどくなっちゃう、」
そう言われて何だか絆された。
彪吾はこの辺では知らない人がいない
水上総合病院の院長の息子。
母親もそこの理事長として仕事をしている。
彼とは中1の頃からクラスがずっと一緒で
ななみが夏休みに今の塾に変わってからも、同じクラスだった。
「・・水上くんは。 お医者さんになるの?」
ななみは普通のハンバーガーにコーラ、彪吾はダブルバーガーとポテトLとナゲットを注文して狭いテーブルがいっぱいになってしまった。
「・・なんせ。 中学受験で失敗してるからなー。 親も妹の方に期待してるかも。」
彪吾は学校の成績もいつも上位をキープするほど学力もあって
野球部でキャプテンもつとめていた。
明るくていつもクラスの中心で。
夏休みに茶髪にしたりといい感じに中学校生活をエンジョイしているように見えた。
いわゆる誰もが羨む『リア充』の中にいる人だ。
中学受験に失敗している
そんな彼の中の一粒のシミのようなものを初めて見た気がした。
今回のお話は志藤家の秀才ななみのお話です。中学3年生になったななみは進路で悩みます・・
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