Tuning up(1) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

急に。

 

寒くなったなあ。

 

 

ひなたは学校の廊下の窓から見える枯葉の風景をぼんやりと見ていた。

 

奏がジャパンピアノコンクールで最年少優勝を果たして

 

すぐにウィーンに旅立った。

 

それから

 

1カ月が経った。

 

 

高校が別々になってからはそんなに会えることもなかったけど

 

会おうと思えば会える距離感は感じていて、それが安心感になっていた。

 

でも。

 

もう時間さえも越えてしまうほど遠いところに彼はいる。

 

わかっていても。

 

 

迎えに行くよ

 

 

そう言ってくれた彼の表情だとか声だとか。

 

今も思い出すだけで胸がきゅんとなる。

 

 

はあ。

 

ぼんやりと窓際にもたれてしまった。

 

その喪失感も癒えないうちに。

 

 

志藤先輩、すっごくカワイイのになんでマネージャーなんですか?チア、なんでやらないんですか?

 

 

何も知らない部活の後輩から思いっきりそんなことも言われて

 

腹立たしいとかそういうのではなく

 

その虚しさにも耐えていた。

 

二度目の手術をしてからもうすぐ1年。

 

病院の先生からは、また運動ができるようになるまでは半年

 

と言われていたけれど、実際生活には支障はなくなり

 

信号が変わりそうな時に走ったりだとかそういうことはできるようになって

 

体育の授業も普通に参加できるようになったけど。

 

とてもじゃないけどこのブランクで、みんなに追いつくことは生易しいものではなかった。

 

今もほとんどを練習のサポートで過ごしていて、いつの間に後輩からは

 

マネージャー

 

と思われていたというショック。

 

 

大学に入って栄養学を勉強して管理栄養士の資格を取る

 

という目標はできたものの、いろんなことが一気に押し寄せてさすがのひなたも落ち込み気味だった。

 

その時。

 

・・ん?

 

かすかに。

 

本当にかすかにピアノの音が聴こえてきた。

 

ピアノ?

 

思わず振り返る。

 

 

音楽室は奥の奥の突き当り。

 

ひなたはそうっとそこに近づいた。

 

音楽室のピアノを弾いていたのは。

 

・・夏目・・?

 

クラスメイトの夏目あお

 

 

2年生になって同じクラスになったが、メガネをかけた秀才風で本当におとなしくて今に至るまで恐らく私語を交わしたことがない。

 

そんな彼が一心不乱にピアノを弾いている。

 

この曲・・

 

ひなたは思わず引き戸に手をかけた。

 

 

彼は戸が開いたのを感じてふっと手を止めてしまった。

 

「あ・・ごめ・・」

 

ひなたは思わず謝った。

 

「・・志藤さん?」

 

「あー、なんか。 ピアノの音聴こえたから。 へー。 ピアノ、やってたんだ、」

 

ひきつった笑顔を向けると、少し恥ずかしそうに俯いて慌ててピアノの蓋を閉めてしまった。

 

「・・や、あの。掃除当番で・・ピアノ、鍵掛かってなくて、」

 

慌てて言い訳をしたり、急に立ち上がって挙動不審になっていた。

 

奏がウィーンに旅立ったあと。ひなたはやっぱり喪失感いっぱいになっています。そして・・

 

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