Tuning up(2) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

そんな挙動不審のあおに構わず

 

「それ・・ ス・・スクリャービン? だっけ、」

 

ひなたはさっきまで彼が弾いていた曲名を告げた。

 

「え、」

 

蒼は驚いたように彼女を見た。

 

「ちがったっけ、」

 

「・・いや。 スクリャービンの、エチュード・・。 え、志藤さんはピアノをやってるの?」

 

「あたし? ううん。 あたしはやってない、」

 

このピアノの音に惹かれたのは

 

いつか奏がレッスンをしているときにさくらの事務所にたまたまいて

 

この曲を聴いたことがあったから。

 

たしか去年のコンクールで弾いた曲、と覚えていた。

 

「スクリャービン知ってるなんて。 クラシックに詳しいの?」

 

メガネをかけていかにも『秀才くん』といった雰囲気の彼ともうクラス替えをしてから半年以上経っているのに初めて話した。

 

本当におとなしくて、正直いるのかいないのかもわからないくらいだというのに

 

こんなにしゃべってくることがひなたには意外だった。

 

「詳しいって言うか、」

 

そう言ったあと奏のことを思い出してしまって少し切なくなった。

 

「そんなにうまいのに。 音高になんでいかなかったの?」

 

話題を変えるように振ってみた。

 

すると。

 

彼は少しうつむいたあと

 

「藝高・・受けたけど。 おっこっちゃって、」

 

ぽつりと言った。

 

「・・藝、高・・」

 

少しどきんとした。

 

「あ、藝高って知ってる? 国立の・・」

 

「あ・・うん。 知ってる。」

 

「すっごい。 もう受験前なんか何時間も何時間も練習したのに。 でも。 すごい人たちがいっぱいいて・・」

 

たぶん。

 

その

 

すごい人

 

の中に奏もいたはずで。

 

「で。 もう一つ音高受けるはずだったんだけどー・・。 試験の日、インフルエンザで40℃の熱が出ちゃって。 試験が受けられなかったんだ、」

 

続いて出た言葉に

 

「え・・。 あーー、そうだったんだ・・ え、ピアノやってんのになんで理数クラス?」

 

気の毒に思いながら疑問をぶつけた。

 

「ぼく社会科一般が全然ダメで。数学と理科は得意だから。」

 

「・・ふうん。」

 

なんだか奏を思い出してしまった。

 

彼も理数がすごく得意だった。

 

「それで。なんとか。 レッスンを受けながら音大を受験したいと思うんだけど・・。 今の先生と、合わなくて、」

 

だんだんとか細くなっていく声にさらに気の毒さを増した。

 

「先生、代えてもらったら?」

 

ひなたは彼の顔色を窺うように言うと

 

「そんな簡単に言えないよ・・。 すごく有名な先生だから・・」

 

さらに肩を落とした。

 

「お父さんがめっちゃ頼み込んでようやくレッスンさせてもらえるようになったんだ。 だからー・・」

 

「そんなヤな先生なの?」

 

「・・なんていうか。 威圧的っていうか。 ダメって言うんだけど・・ どこがダメなのか言ってくれないんだよ。 なんかいちいち先生の顔色うかがうようになっちゃって。 それでも見てくれるうちはまだよくて。最近はほとんど弟子の人が見るようになって、先生とも会ってないくらい。 進路のことも全然相談に乗ってくれないし・・それだからか今、すっごいスランプ。 この春にもコンクール出たんだけど一次で落ちちゃったし。さらに先生はなんも言ってくれなくなったし、」

 

「そうかあ・・」

 

なんだか気の毒になってきた。

 

クラスメイトの夏目蒼。今まで接点がなかったひなたですが・・

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