瑠依は自分のリュックから封筒を取り出した。
そしてそこからB6くらいの大きさの写真を出してテーブルの上に置いた。
「・・?」
さくらはわけがわからずにそれを覗きこむ。
一人の青年がサックスを手に笑顔を向けている。
「・・この人・・」
さくらはものすごい既視感に襲われた。
「・・嵯峨、純太さんだよ。」
瑠依はぽつりと言った。
前にクラシックマスターの雑誌に載っていた彼はモノクロでしかも横顔だけだったのではっきりとした表情は見えなかった。
さくらはもちろん、瑠依も彼の顔をこうして見るのは初めてであった。
それが。
写真は重なっていてもう一枚。
こちらは街角だろうか、サックスを吹く彼を横から撮ったもの。
真っ先に思ったのは
めちゃくちゃイケメンで
めちゃくちゃカッコイイ
ということだったが、今それを口にすることがとてもできないほど瑠依の表情は重かった。
「・・どうしたの、これ、」
さくらは半ば呆然として写真を手にした。
「・・1週間くらい前。 学校に一人の女の人がおれを訪ねてきたんだ、」
もう一口コーヒーを飲んで話し始めた。
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「あなたが。 石清水瑠依くん?」
年のころは20代半ばか後半くらいの女性。
「そう、ですけど・・」
見た目は欧米人のようだけれど、日本語がペラペラだった。
「あー・・やっぱり。 似てる、」
彼女は感動したようにつぶやいた。
「似てる・・?」
「あ、ごめんなさい。 私。 宮野木サラと言います。」
彼女は自分の名前を告げた後、バッグから封筒を取り出した。
「この人、知ってますか。」
取り出した写真にはサックスを抱える男性が。
一瞬にしてドキっとした。
この人は、知らない。
でも。
知ってる。
そんな思いが瑠依の頭の中を混乱させた。
「・・この人は、」
思わず彼女を見やった。
「嵯峨、純太さんって方です。 あなた、嵯峨さんのサックスを持っているんですよね?」
対照的に満面の笑顔で言われた。
その名前に自分の動揺がさらに大きくなった。
「・・・」
全く知らない人が。
純太を知っている。
そして自分も知っている。
その事実だけが頭の中をぐるぐるとした。
瑠依は言葉を告げることができなかった。
「ごめんなさいね。 いきなり。 ね、ちょっとお茶飲む時間あるかしら?」
彼女は屈託ないい笑顔で言った。
ボストンの瑠依に思いがけない人物が近づき・・
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