「・・子育てって。 なんで『仕事の次』みたいに思われちゃうんですかね、」
萌香は斯波にお茶を淹れてコトっと置いた。
その言葉に顔を上げる。
「会社で仕事をしていることの方が上みたいな。 育児は・・その下って感じで、」
「そんなことは、ないと思うけど、」
「子供のことで仕事を休んだりすることが・・とても悪いことのように思われて。 自分が休むことで誰かにそのしわ寄せがいくことに遠慮して。人ひとり育てるのに。 片手間でできることじゃないのに。 仕事をしたいということが自分のわがままなのか、と思ったり。 世のお母さんは常にそのことと戦っているんです。」
彼女の言葉が胸にしみた。
そこで一人で遊んでいた翔がおもちゃを持ってニコニコしながら斯波のところにやって来た。
ひょいっと抱き上げて膝の上に乗せた。
「・・パパ、これー・・」
このごろはすっかり言葉もきちんと話せるようになって、意思疎通も少しはできるようになって。
「・・断乳して。 離乳食になって。 もう母親だけしか子供の面倒を見られない・・なんてことなくなったのにな。 男ができないことなんか。ないのにな、」
翔からおもちゃを受け取った。
すると気が済んだのか、するっと下に降りてまたおもちゃを取りに行く。
保育園の送り迎えも。
病気した時の看病も。
ほとんど彼女がその役目を負っている。
その上
もう一人子供が欲しいと願う彼女がなんだかとても愛おしい。
「・・忙しい忙しいばっかりで。 ホントは時間を作ろうとしなかっただけなのかもな・・」
斯波はぽつりと言った。
「どんなに大変でも。 子供を育てていくことの歓びには勝てない。 不思議ね。 私も自分がこんな風になるなんて思ってもみなかった。」
萌香は翔を愛おしく見つめた。
「子育ては。 『プライベート』なことではないよな・・」
斯波も頬杖をついておもちゃで一心不乱に遊ぶ翔を優しい目で見やった。
「彼女のお母さんに産後半月ほど来てもらえることになりました。 そのあとはぼくの義姉も半月ほど来られると。 あとは・・どうなるかちょっと予測がつかないのですが。 保育園に預けられるようになるのが3か月からで、それもまだ探している状態です。 育休をいつ取るかというのを今決めることはできません。 ぼくの仕事の状況もありますし、それはその状況に応じてぼくがフレックスタイムの出勤にしていただいて、ということをお願いしたいのですが、」
翌日葦切は神妙に斯波に向かっていた。
「本当に子育ては思いもしないことが起きるもので。 大人の思い通りにいかないものです。 会社に迷惑にならないように、それでいて子育てもちゃんとできるように。 もしぼくがモデルケースだとしたら・・ 長い目でみた『育休』を、会社にはお願いしたいです。」
斯波はゆっくりと顔を上げた。
萌香の話を聞いて斯波は「子育て」の重要性を感じ入ります・・
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