「ぼくもまとまった休みは取れないです。 でも。 何かあった時にはきちんと斯波さんにお休みを取れるようにお願いするつもりです。さくらさんはとにかく安心して出産して。 あとは助けてもらって・・がんばりましょう。 すべて。 さくらさんがまた予定通り出社できるように。 もちろん子供のことは予定通りにいかないです。 そうしたら・・また二人で考えていけばいいです、」
いつも笑顔の彼が真剣な表情になると
少しドキっとする。
さくらは少しだけ考えた後
「・・わかりました。 母に連絡してみます。 お義姉さんにも・・お手伝いをお願いしてもらっていいですか、」
素直にその提案を受け入れた。
すると葦切にいつもの笑顔に戻った。
「はい。」
萌香は食事の後テーブルを拭いてひとつため息をついた。
「・・どうしたの?」
その様子が斯波には気になった。
「今日。 社長室で葦切さんの『育休』のお話を聞いてしまったんですけど、」
そう切り出した彼女に、ハッとした。
「葦切さんは、とても会社のこと、事業部のことを考えてらっしゃいました。 ただ育休を取ればいいというのとは違う、と。 子育てと仕事を両立することで苦しんでいる女性はきっとたくさんいます。 そういう外からの圧力を全て女性が負うのはおかしい、と。」
「え、」
「女性も男性もなく、子供のために融通しながら会社とも相談してやっていきたいって言ってました。 なかなか男性でそこまで考えてる方はいないと思って・・。 事業部も忙しいでしょうが、もし葦切さんがお休みと取りたいと言ってきた時には気持ちよくお休みさせてあげてほしいんです、」
「それはー・・」
斯波も頭ではわかっているのだが、なかなか頷けない。
「あたしも。 ・・二人目を考えたいなって、」
続けて彼女から言われた言葉に驚いた。
「二人目・・?」
「最初は子供は一人でいい、なんて思ってましたけど。 翔を見ていたら・・やっぱりもうひとり欲しいなって。 あなたは・・考えていませんでしたか?」
萌香は斯波の前に座った。
「・・・・」
正直。
あまり考えていなかった。
「結局。 大変なのは萌だし、」
「わかってます。 常務も二人目考えてもええんやでって。 言ってくれて。 今でも翔のお迎えや病気をしたりして急に休んだりすることもあって・・心苦しいですけど。 でも。 会社が私を待っていてくれるのなら・・ 頑張ってもう一人って、」
いや。
大変なのが彼女だって
おれが決めつけてるだけなのかな。
斯波はそんなことをふっと考えてしまった。
葦切の話を聞いていた萌香は母親の担う重圧を斯波に訴えます・・
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