「やっぱり現実には、厳しいよ。 葦切さんに今抜けられたら、」
斯波は休憩室でペットボトルのお茶を飲みながら言った。
「結局。 夫ができることって限られてるんですけどね・・。 でも。 葦切さんのところはどちらの実家も離れてて。 子供を預けられるようになるまでは大変だと思いますけど、」
玉田は控えめながら自分の意見を言った。
「社長も。 急に言うから・・。 ま、といって。 この時期は先に言われていてもなかなか難しかったかも、」
管理職としてきちんと考えなくては、と思いながら斯波は頭が痛かった。
「せめて。 残業なしで帰らせてあげられるとか。 フレックスタイムで出勤してもらうとか。 そのくらいしか、」
「でも。 それでも助かると思うんです。 ウチはぼくの両親と一緒に住んでいたので助かりましたけど。 斯波さんのところも大変だったじゃないですか、」
「まあ・・」
萌香が産後4か月で復帰することになり、北都邸のシッターさんに預かってもらったこともあった。
育児なんかまるっきりだった自分が。
彼女が泊りがけの出張に行くことになって初めて一から赤ん坊の面倒を見て
こんなにも大変なのか、と実感し
それからは休みの日はなるべく自分が子供の面倒を見て、家事でも彼女を助けた。
それだって
やっぱり今でも子供が病気をしたりすれば彼女が仕事を休んで世話をしたりしなくてはならない。
確かに母親が育児において負担をすることは
結局変わってないのかもしれない。
「うん。 この前より良くなったね。 亜里沙ちゃんと梨乃ちゃんはもうそろそろ次の課題に移っていいかな。 受験校の課題曲も発表になるころだし、そっちと並行してソルフェージュの時間も増やして。レッスンの後にノートつけさせるの忘れないでね。」
「OK。 カジにもソルフェージュの指導に入ってもらおうと思ってる。 この前あいつのレポート読んだけど、なかなかだったな、」
「けっこうオタクなのよ。 ちょっと言葉が足りないところもあるからその辺はフォローしてね、」
「わかった。 体調は? どう?」
「うん。 なんかおなかが重たくてなかなか寝付けなくて。 この前病院に行ったらまだまだそうですねって言われた。」
「まあ。 気をつけてな。 ほんと。 年なんだから、」
「それは余計だよ!」
葦切が帰宅するとさくらがパソコンの前で成と会話中だった。
「じゃ、頼むね。 おやすみ~~」
スカイプを切って初めて彼が帰って来ていることに気づいた。
「あ、ごめんなさい。 おかえりなさい、」
「受験生もいるから大変ですね、」
「今は便利ね。 こうやって生徒の動画チェックもできるし、昔は夢だったテレビ電話も簡単にできるし、」
さくらはふと笑った。
とはいえ事業部も手一杯で斯波も葦切の育休に頭を悩ませます・・
↑↑↑↑↑
読んでいただいてありがとうございました。よろしかったらポチお願いします!
で過去のお話を再掲しております。こちらもよろしくお願いします。