「幸い。 上司がウチの事情を汲んでくれて。 ぼくが早めに上がって瑠依を保育園に迎えに行ったりも彼女と交代でやってこれました。 ぼくは。 女性だけが子育てで社会からいろんな圧力を受けることがとても不公平だと思うんです。 子供の迎えの時間があるから、と毎日周囲の目を気にしながら帰って行くお母さんは・・きっとたくさんいると思うんですよ。 もし。 もし・・社長が男性の育休を考えて下さっているのなら。 女性と同じように男性も子育てにおいて時間を自由に使えるという『権利』を考えていただきたいんです。 誰に遠慮をすることもなく、仕事も円滑に進められるような・・そんな職場を、 あらかじめ決めたお休みよりも。ぼくは臨機応変に職場に対応して頂いた方がありがたいです。」
葦切はいつもの穏やかな口調に戻ってそう言った。
パーテーションの向こうで資料の整理をしていた萌香は思わず手を止めた。
真太郎と南は思わず黙り込んでしまった。
それにハッとして
「す、すみません・・偉そうなことを・・」
葦切は慌てた。
「・・いいえ。 ぼくも短絡的でしたね。 ただ『育休』を取らせればよい、というものではないんですね・・」
真太郎はにこやかにそう言った。
「そやなあ・・ お父さんとお母さんが子供のために『シフト』を組んで。 それを会社が受け入れていかないと・・やな。 そして緊急時にもすんなり対応できるようにもしないとね。 確かに。 それを認めてあげるのが・・会社の役目かもね・・」
南も感心したように頷いた。
「篠宮さんの場合は。 社長ですから。 社員のことをまず考えないといけない。 さらに厳しい境遇になりますからね・・」
「子育てが軌道に乗るまでは・・。 私も会社に迷惑をかけるかもしれません。 でも。 彼女と協力してなんとかやっていきたいんです。 瑠依を育てていた頃はほんと毎日大変で大変で。 こんなこともう二度とできないって思ったんですけど。 またこの年で子育てするって『仕事』を貰えたのは幸せなことです。 経験がある分、今度はきちんと先を見据えてやっていきたいと思ってます。 ・・ホクトの社員さんたちが少しでも子育てしやすい環境になるように。 ぼくなりに頑張ってみたいと思います、」
葦切はいつもの笑顔だった。
葦切の「育休」の考え方に真太郎らも考えさせられます・・
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