そうこうするうちに学校帰りの奏がやってきた。
「涼太郎くん・・?」
何故かさくらの事務所にいる涼太郎に驚いた。
涼太郎はちょっと気まずそうに会釈をした。
何か言いたそうな彼に
「これから。 奏はレッスンなの。 1時間半くらい、待てる?」
さくらは言った。
「はい、」
少し考えて頷いた。
昨日ひなたとの電話中に志藤と涼太郎の間でいざこざがあったことはわかっていた。
そしてその『元』になっているのが自分である、ということも。
「先生、」
奏が切り出すと
さくらは見透かしたように
「レッスンが、先。 こっちも予定があるからね。」
バッサリ言った。
「はい、」
奏は頷いて支度をし始めた。
コンクールの3次のコンチェルトの曲目はまだ決まっていなかったが、もし本選で上位3人に入ればドイツのコンクールに出場できるが、出来なかった場合、1月の香港のフェアリーズジュニアコンクールに並行してエントリーしているので準備をしなければならない。
奏の希望もあり、予選の自由曲を
ショパン即興曲第3番に決めた。
「ここまでこの前仕上がったから。 とりあえず通しで流れを掴もう。」
さくらは楽譜を指で追った。
「はい、」
指ならしを終えた後、一息ついて奏は鍵盤に指を落した。
後ろの椅子で姿勢よく座っていた涼太郎だったが、奏の演奏が始まるとさらに背筋を伸ばした。
2年前にひなたと一緒に奏のコンクールに行ったことがあった。
その時よりも。
ものすごい圧倒的な空気を感じた。
うまく言えないけれど、奏がものすごいスピードで階段を駆け上がって行くような。
「いや、やっぱりちょっとこなしきれないんじゃない? なんか前のめり感、すっごく感じるし。」
途中でやめさせてさくらは厳しい口調でそう言った。
奏は彼女からのダメ出しをうつむきながら聞いた後
「・・もう一度。 もう一度お願いします、」
顔を上げてきっぱりと言った。
しばらくの間、楽譜を目で追ってひとりブツブツと何かを言って首でリズムを取る。
すごい集中していることが彼の背中からも感じる。
涼太郎はジッと奏の後姿を見つめた。
奏の厳しいレッスンを目の当たりにする涼太郎。 そんな彼の姿を見てジッと考えます・・
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