Penny Lane(9) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「それを考えると、さくらは設楽さんの『本当』は知らずにいたんだなあと思う。」

 

小野塚の言葉に奏はハッとした。

 

「彼女とつきあってた頃の設楽さんは、けっこう大変だったからね。 いっつもピアノに悩んでた。 あの人にしかわからない悩みで。 精神科にも通ったりしてたよ。」

 

奏には少しショックな話だった。

 

 

あの人

 

あたしがいなくちゃダメなの。

 

 

小野塚はあの頃のさくらを思う。

 

「・・さくらには気の毒だったけど。 あの人はきみと、きみのお母さんに救われたのかもしれないって今は思う。」

 

「ぼくたちが、」

 

奏は信じられないようにそうつぶやいた。

 

「でも。 あの時は。 そんな風に思えなくて・・」

 

小野塚がそう言いかけた時

 

「ただいまー」

 

さくらが帰ってきた。

 

「あ、おかえりー。 ごくろーさん、」

 

小野塚は振り返って笑顔で言った。

 

「あ、奏。 まだ弾いてないでしょうね。 勝手に弾いちゃだめだよ、」

 

「・・ひ、弾いてないです。 ちょっと宿題やってて・・」

 

奏も慌てて繕った。

 

「ナルも今日はルリちゃんとカイトのレッスン頼むね。 あの二人もコンクール近いから、」

 

さくらは薄手のコートをひっかけながら言った。

 

「オッケーでーす。」

 

 

なんとなく。

 

なんとなくだけど。

 

小野塚と設楽が疎遠になってしまった背景に

 

さくらとのことが絡んでいる気がした。

 

奏はぼんやりと輪郭だけが見えていた。

 

それだけに

 

小野塚のさくらへの気持ちが少し気になった。

 

なんだか掴みどころのない人だったけど。

 

奏はさくらと談笑する小野塚を見やった。

 

 

きみときみのお母さんに設楽さんは救われたんだよ

 

 

あの言葉に自分が『救われた』気がした。

 

いつも設楽のことはさくらに後ろめたくて仕方がなかったのに、あんな風に思ってくれている人もいた

 

と思うと少しさくらに申し訳なかったけれど、ホッとする自分もいる。

 

先生だって

 

今は幸せなんだから

 

一生懸命自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

「どお? 家族だんらん。」

 

ひなたがスマホの画面の向こうでむふふと笑った。

 

「家族だんらんって。 そんな感じでもないよ。普通だよ、普通。」

 

奏は頬杖をつきながら言った。

 

母が日本に来てから2日後に設楽も帰ってきた。

 

今は設楽がもともと日本で住んでいたマンションで初めて家族4人が過ごしている。

 

「さっき美音にごはん食べさせたんだー。 おかゆがあんまり好きじゃなくて、かぼちゃとかじゃがいもを潰したのが好きなんだって。食べてるとにこーって笑うんだよ、」

 

奏は嬉しそうに言った。

 

「けっこうだんらんをエンジョイしてるじゃん。 あたしも来週からリハビリの日以外は毎日部活に出ようかと思ってるんだ。」

 

「大丈夫?」

 

「うん。 まあ、まだ運動って感じじゃなくて。 みんなの手伝いばっかりなんだけど。  今ね、なんと。料理に凝ってるんだー、」

 

「は? 料理? ひなが?」

 

「うん! 腱に効くっていうビタミンとかコラーゲンとか。ママに聞いて色々試してるの。今度食べさせてあげる!」

 

ひなたの笑顔がモヤモヤを吹き飛ばしてくれそうだった。

 

設楽をとても尊敬している風の小野塚がなぜ彼と離れてしまったのか、奏は気になります…

 

 

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

 


人気ブログランキング

 

↑↑↑↑↑

読んでいただいてありがとうございました。よろしかったらポチお願いします!

 

 

 

 

 

『My sweet home~恋のカタチ。1 』 --peach blossom--

 

『My sweet home~恋のカタチ。2』 --bitter green--

 ↑↑↑

夏希&高宮編

 

『My sweet home~恋のカタチ。3』--ash gray--

↑↑↑

八神編 ただいま連載中です !

 

過去のお話を再掲させていただいています。

 

こちらもよろしくお願いいたします。