高校の入学式まであと3日。
奏は5月のコンクールの準備と来るべき高校生活への準備に追われていた。
「入学式、何時からなの?」
さくらのレッスンのあと片づけをしている時に彼女からそう聞かれた。
「えっと、9時半だったかな。 あ、別に。 来なくても大丈夫ですから、」
中学の卒業式にさくらと南が二人でやってきたことを思い出し奏は先にやんわりとそう言った。
「え? なによ、その迷惑そうな言い方は・・」
「や、迷惑とかではなくて。 ほんっと先生も忙しいんですから、」
「・・あ、そ。」
つまらなそうなさくらの顔を見て
やっぱり来る気だったんだな・・
勘のいい奏はそう悟った。
そこにインターホンが鳴る。
「はい。 はい・・そうですが。 え? ・・ええっと、どういった御用件でしょうか、」
さくらの様子に奏はやや気になって彼女の方を見やった。
志藤は午前中外出をして昼前には社に戻ってきた。
4月の新年度になり、社長交代というホクトにとって大きな節目でもありもうとにかくあいさつ回りで忙しく過ごしていた。
「あ、おかえりなさい。」
志藤が部屋に戻ってくると萌香が立ち上がった。
「新栄堂の長谷川さんが。 さっきからお待ちなんですが、」
「は? 長谷川さん? アポないやん、」
志藤は疲れたようにどっと椅子に座った。
「そうなんですけど。 志藤取締役が戻るまでちょっと待たせて欲しいとおっしゃって、」
萌香は困ったように言った。
「え~~? もー、なに?? 新栄堂なら昨日挨拶に行ったやん・・」
志藤は面倒くさそうに言った。
新栄堂は日本有数の広告代理店で、芸能社のホクトとは昔から懇意にしていて、担当者の長谷川と志藤はもう10数年のつきあいになる。
仕方なく彼の待つ応接室に足を運んだ。
「あ、志藤さん。すみませんねえ。 お忙しいところを、」
「ほんっと。 忙しいんですよ・・」
長谷川とは本音を言えるくらいのつきあいなので、本当に忙しいことを素直に口にした。
「ちょっと。 お願いがあって。」
長谷川はニヤっと笑った。
さて、NYから帰った奏は高校の入学式を待つだけとなっています。 そんな時、彼の周辺に異変が起きます…
奏の登場はこのへんから→★
奏が北都家に下宿するいきさつからさくらとの出会いはこのへんから→★
↑↑↑↑↑
読んでいただいてありがとうございました。よろしかったらポチお願いします!
『My sweet home~恋のカタチ。1 』 --peach blossom--
『My sweet home~恋のカタチ。2』 --bitter green--
夏希と高宮の初期の頃のおはなしを再掲させていただいています。 よろしかったらどうぞ。