Everlasting(8) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「・・南ちゃんみたいに。 あたしは何も約束されてへんの。」


紗枝はコーヒーのカップをテーブルに置いた。


「え・・?」


「いくら頑張って来ても。 くだらない噂で社内での評判が落ちてしまって、そのまま仕事での評価まで落としてしまうかもしれへん。 この会社のたくさんある歯車のうちのたったひとつやん。 あなたはもっともっと重要なポジションにいてはるから。 あたしの気持ちなんかわからへんわ。」



いつもの紗枝ではないみたいに


冷酷でそして突き放した言い様だった。



「そんな、」


南は否定したかったが、彼女には何も言い返せない雰囲気があった。



「悪いけど。 あたしのことはもう放っておいてくれへん?」



そう言って紗枝はその場を立ち去った。



「全く。 おれに内緒でいろいろコソコソするから。 そんなややこしいことになるねん、」


志藤は非常に機嫌が悪かった。


「別に。 志藤ちゃんに黙ってたわけやないよ。 人事のことはいくら志藤ちゃんにだって言えないことあるし。」


南は大きなため息をついた。


「まあ・・NCの部長以上クラスやったら。 栄転になるんやろな。 正直、今のポジションより紗枝にはいい話やし。 NCは北都とは別会社になってるけど、国内のホテル業界でもトップの方やし、この不景気でもなんとか閉めるホテルもなく、頑張ってるし。 今までは北都社長が一人で色々やってたけど、社長が変われば大変やろしな。 有能な人材は一人でも多く欲しいところや、」


志藤はタバコに火をつけた。


「実際問題。 陸は来年には大阪に帰るねんで。 遠恋なんかな、若いモンならパワーで何とかなるけど。お互いそんなに若くもないのに難しいやん、」


「でもまあ。 紗枝ならそう言うかなって気はする。」


「え?」


「ここまでくるの、ほんまに大変やったと思うで。 北都はこの業界の中でも結構体質が古いというか、割りと冒険とかしないタイプで、よく言えば堅実。 先例のないことをやる時はほんまに苦労する。 ホラ、事業部ができたばっかりの時も社内でもなかなか理解してもらえなくて。 大変やったやん、」


志藤は笑った。


「・・まあ、」


南も事業部創設の時から携わっていた身として、それはわかっていた。


最初の頃は正直事業部なんかみそっかす扱いで


他の芸能部に比べたら、部屋も小さくて汚くて


社内待遇だってよくはなかった。


そんな部署あったっけ?


なんて社内の人間にさえ、できて2年して言われたりしていた。


コツコツ頑張って何とか認められるようになってきた。


それは女性初の取締役を狙っていたという紗枝も同じ・・


志藤の言いたいことはわかった。



「周りがどうこういっても始まらんてことや。 運命なんか、人に動かされてそれに身を任せるか自分で切り開くかわからへんやん、」



いつものようにお気楽に言ったが


「陸は。 あんなにものわかりのいい感じでよかったんやろか、」


南はやはり弟のことが心配だった。



「難しいけど。 紗枝にとってはさらに迷うことになるやろけどな、」


「え?」


「男が『おれのために受けないでくれ』なんて言ってきたら、100%反発して意地でも受けるやろし。といって、引き留められないってのも寂しいしな。 特にあいつから見たら年のこともあるし『受け身』やん。引き留めて欲しいなんて口が裂けても言えへんしな、」


志藤は紗枝の複雑な気持ちを慮った。


南は自分のことを思いだした。


真太郎と付き合い始めたばかりのころ


社長からNYへの転勤を言われて


真太郎はもうほとんど泣きながら


離れたくない


って言ってくれた。


まだ20歳そこそこで若かった、というのもあるけれど


その時は本当に迷った。


それでもこれからの二人のため、と信じて数年間離れて暮らした。


陸はきっと


あの時の真太郎のように泣いてすがったりしない。


それだけは、わかる。


紗枝の仕事への思いや陸への気持ち、全てを繋ぐことはできないのでしょうか…



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