「もうすぐ搭乗時間ですよ、」
有吏は座ってメールを打っていた茜に声をかけた。
「今ね。 結城さんにメールしてたの。」
茜はふふっと笑った。
「は? 結城さんに????」
ドキンとした。
「ホラっ!」
彼女は明るくその文面を有吏に見せた。
『ご結婚決まったそうでおめでとうございます! 私はこれからドイツに出発します。 これからの数年間はヴァイオリンに邁進して、いつの日か日本で『凱旋公演』なんかができるくらいビッグになって戻って来たいです(^ ^)v
私は結城さんのおかげで自分のヴァイオリンに自信を持つことができて、将来への夢もはっきりと見えるようになったと思っています。 あなたが大好きだったころのことは今は懐かしく思い出されます。 結城さんも幸せをようやく見つけられたようなので、私も心おきなく旅立つことができそうです。 お幸せに、と今は心からお祝いの言葉を送ることができます。』
「ちょっと上から目線かなァ・・・・。 ムカついてたりして、」
茜はクスっと笑った。
「なかなか結城さんに上から目線で言える人はいませんよ、」
有吏も笑ってしまった。
すると着信があった。
『凱旋公演は必ず見に行きます。 S席で10000円以上は取れるアーティストになって戻ってきてください。 ありがとう。』
長い長い茜のメールとはうらはらに
ものすごくあっさりとした
そして彼らしいメールが返って来たので、二人で顔を見合わせて笑ってしまった。
「ごめんね。 忙しいのに、送ってもらって。」
茜は手荷物を持って立ちあがった。
「いえ。 これも仕事ですから、」
有吏は笑った。
「瀬能くん。 本当にありがとう。」
茜はあらたまったように彼に言った。
「え、」
「なんか・・・瀬能くんにはたくさん支えてもらった感じ。 たった1年だったけど・・・すごーく・・今思い出しても楽しかったなって、」
そんなことを真顔で言われて。
「や・・・おれは、何も・・・・」
なんだか照れて目をそらしてしまった。
「・・・瀬能くんのおかげだよ。 ありがとう。」
欧米育ちの彼女は
こんなに恥ずかしいことも真正面から言ってくる。
もう心臓がキャパオーバーだった。
「・・・ビッグになって帰ってくるね! 待っててね、」
キラキラ光る真っ黒な瞳がきれいだった。
待っててね
その言葉だけで胸がいっぱいになる。
そして茜ともしばしの別れとなります。 有吏はちょっぴりせつなく・・
↑↑↑↑↑↑
読んで頂いてありがとうございました。
ポチっ! お願いします!
人気ブログランキングへ
携帯の方はコチラからお願いします