「・・・そっか、」
有吏は夜中に帰って来たあゆみから話を聞いた。
「・・・本当に。 女将さんも旦那さまも。 もったいないくらいの心の広さで・・・。 すっごい涙が止まらなくて、」
そう話しているそばからもう泣けてきそうだった。
「結城さん。 みんなの前で土下座したんだよ、」
有吏はキッチンであゆみに紅茶を淹れてきてやった。
「え・・・・」
「もう一度頑張りたいからって。 ほんっともう・・びっくりした。」
有吏はふっと笑った。
「彼が・・・・・」
あゆみも彼のそんな姿が想像できなかった。
「やっと。 結城さんの本当の姿が見えたなあって。 もう、全然自分を見せない人だったから。」
有吏も自分のマグカップで紅茶を飲んだ。
「・・・なんか。 有吏のこともまだまだ心配なんだけど、」
あゆみは小さな不安を口にした。
すると
「いいかげんにおれのこと信じてくれない?」
有吏は笑った。
「え、」
「・・・おれなりにお父さんとお母さんが死んでから・・何とか頑張ってきたんだから。 一人で生活なんか、心配することないって。 それに。 おれは『家族』だろ? 家族で血が繋がってるんだから、どんなに離れていたってそれはかわらないじゃん。 血が繋がってるってそーゆーことだろ? 何があっても、おれたちたった二人の姉弟なんだから。 もし姉ちゃんがつらいことがあったり悲しいことがあったら、いつでも泣いて喚いての姿をおれに見せてくれたらいい。 それを何も思わずに自然に受け入れるのが姉弟だもん、」
今日は少しいつもと感情のメーターの触れ方が敏感みたいだった。
あゆみは大粒の涙をぽろぽろとこぼした。
「・・・そんなに泣いて、」
有吏が笑ってしまうほどだった。
「だって・・・・有吏がそんなこと・・・言えるだなんて。 」
「だから! おれを少しは信用しろって、」
「いつのまにか。 ・・・・有吏があたしを守ってくれてたんだね・・・・。 ほんとね、あたし・・・もっともっと稼げるなら・・風俗とかで仕事しようかって思っちゃったこともあって・・・・でも・・・やっぱ有吏がいたからそういう道に外れずに生きてこれたから・・・・有吏がいたから頑張ってこれたんだよ・・・・」
もー
だから・・・・
ここで泣いたらみっともない。
有吏はちょっとだけ男としてのプライドが邪魔をして涙を必死になって堪えてしまった。
「・・・ヨカッタなあ・・・・フーゾクに行かなくて、」
わざと明るくそう言って無理に笑顔を作ったが
やっぱり鼻をすすってしまった。
よかったね
姉ちゃん・・・・
おめでとう、
本当はこの言葉を言いたかったのに。
有吏もようやく姉の幸せを喜べるようになり・・
↑↑↑↑↑↑
読んで頂いてありがとうございました。
ポチっ! お願いします!
人気ブログランキングへ
携帯の方はコチラからお願いします