Leben~命 (19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

真尋にとっても久しぶりに楽しい時間になった。



「またライヴをやって欲しいな。 前みたく、」


常連客からも声が掛かる。


「うん。 そーだなあ・・。」


真尋は自分が今選んでいる道がそこに戻れるのか少し複雑でもあった。


「ダメダメ、もうマサは『アルデンベルグ』と競演したら、きっと世界中からオファーが来るようになるよ。 そんな小さなライブなんかできないよ、」


と、また声がかかり


「いや。 きっと。 またやるよ。 おれの原点はここだから。」


真尋はそう約束した。


シェーンベルグの期待とは程遠いことなのかもしれないが


自分のスタンスはそのままでいたいとも思う。




それでも絵梨沙は明るい表情の真尋の姿に少しホッとした。


「あたし。 こっち来て初めて真尋の笑った顔見た、」


南はクスっと笑って絵梨沙に言った。


「真尋と出会った中学3年生の時から今まで。 彼はずうっと変わらなかったから。 明るくて奔放で。 自由で。 一緒にいると楽しくて。 でも、・・・うん、すっごく大人になったなあって。 前は嫌なもんは嫌!って絶対に受け入れなかったし。 我慢して何かをやるなんてできなかったもん。」


絵梨沙も出会った頃の真尋のことを思い出していた。


子供がそのまま大きくなったような人だった。



「・・ええ。」


「ここで。 たくさんの人達と出会って。 頑張って・・・。 成長したんやな、」


南がつくづく言うと、


「・・ほんと。 真尋に比べて・・あたしはいったい何をしてきたんだろうと思います、」


絵梨沙は自分のこれまでの経緯を恥じた。


南はニッコリ笑って彼女の背中に手をやって


「もー・・。 エリちゃんはママになるんだよ。 すっごいことやん。 真尋を必死に支えて、頑張って。 エリちゃんもいつか自分のためにピアノを弾いていけるように。 きっと大丈夫、」


優しく

優しく


母親のように言った。



「南さん・・・」


絵梨沙はまたじわっと涙が出そうになった。


「あたしも。 今日は久々に飲んじゃおうかな~~~。 ウイーンのワインって美味しいよね!」


いつもの南だった。




9月に入り


絵梨沙は臨月を迎えた。



予定日まであと2週間。



「沢藤先生ね、もう今月はいつでもお休みできるようにしたからって。 生まれたら飛んでいくって、」


南は絵梨沙と一緒に料理をしながら笑ってそう言った。



「母も忙しいので・・・。 そんなに長くいれなくて、南さんに迷惑をかけてしまうんじゃないかって、」


「そんなん! あたしはエリちゃんと赤ちゃんの世話をするためにここに来たし。 ほんま。 待ち遠しいねん、」



相変わらず壮絶な毎日を送る真尋はほとんど家に戻らなくなった。



オケとの練習は来月からだが、シェーンベルグの意向でそれまでに完璧にしておきたいということで


彼の身体の衰弱は激しいものの、病院を抜け出して彼のためにレッスンを続けた。




南がいてくれて本当に絵梨沙は心強かった。




買い物に出たついでに絵梨沙はそっとレッスンスタジオを覗いていった。



懸命にピアノを弾く真尋の横でソファに体を預けるようにシェーンベルグはジッとそれを聴いている。


もう秋なのに


真尋は真夏のように汗をほとばしらせていた。



絵梨沙はそっとシェーンベルグの横に座る。


彼は特に彼女に気づいても、何も言わずにまんじりとして真尋のピアノに聴き入る。



怖いくらいの迫力で


音が研ぎ澄まされて



絵梨沙もすぐにその音に飲み込まれていった。




時は無常にも過ぎ、真尋のピアノの完成と反比例するようにシェーンベルグは・・



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