Sanftheit~優しさ(2) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

アパートの部屋の前まで来て、


「・・来る?」


彼はナニゲに私を誘った。


私はなんのためらいもなく


「・・うん、」


と彼の部屋に入った。



ただ


彼のピアノをそばで聴いていたいだけだった。



いつものように散らかっている彼の部屋を片したり、食事の用意をしたり。



気がつけば



ほとんど『彼女』がすることを私は彼にしていた。


それもあの『ぎっくり腰事件』で、あまりに自然にそうするようになって。


私は自分がしていることの深さまで気がついていなかった。



相変わらずしっくりこないオケとの練習に彼はいらだちも感じているのだろうが


全くそのような素振りは見せない。


陰口だってきっと耳に入っているのに、決してそのことで心を乱したりしない。



彼のその強さに私は尊敬さえ感じていた。



一流ピアニストを目指す私よりも彼はもっともっとプロ意識を持っていた。


彼のことをどんどん知るごとに


その変人っぷりより、彼のいいところばかり目に付くようになった。




苦手だった速いアルペジオの部分も、もうカンペキだった。



私はあれこれとアドバイスをすることもしなかった。


彼はたぶん自分で答えを見つけるのに今は必死なのだから。




この日までは、落ち着いていたが


本番が近づくにつれ、彼はまたおかしくなってきた。



玄関のドアに鍵をかけるときは、たぶん無意識にピアノに没頭したい時だと理解することもできた。



実は


彼が練習に没頭する隙に私は彼の部屋の鍵をこっそりスペアを作っていた。


何かあったら困る、と思ったからだ。



それほど彼はいつも以上におかしくなる。




私が勝手に入ってきているのに、全く疑問に思わないように


「・・・あれ? 今・・・昼? 夜?」


普通に問いかけてきた。



「・・夕方の5時よ、」


「5時・・・。 5時。    5時・・・」



『5時』をずっと繰り返していた。


半分眠りながら。



静かになったと思ったら鍵盤の上に手を置いたまま口を開けて、というありえない姿で寝ている。



朝、来てみるとピアノの下の床に直に寝ていたりする。



風邪でも引いたら大変・・・



私はそのたびに彼に毛布を掛けてやったりして、今思えば不思議なほど世話を焼いていた。




前日のリハの時も


半分、幽体離脱しているのではないか、という風体だった。


みんながドン引きするほど。



もう


『大丈夫なのだろうか?』


と、陰口を叩いていた人達もそれが不安に変わっていくくらいだった。




真尋の変人っぷりに絵梨沙は逆に何とかしてあげなくちゃ、と思い始めます・・・


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