「アハハハっ!! そんで合鍵までもらっちゃったの~~~?」
南は大いにウケていた。
「ほんっとにもう・・・おれに何をしろって言うんだって・・・」
玉田は肩を落とした。
「まあまあ。 そんだけまだ本気の女性がいないってことだから。 そのうちソレ返してって言ってくるかもだし、」
香織も笑う。
「おこづかいもくれた後で言われたら。 断れないし、」
「ええんとちゃう? もらっておきなさいよ。 金持ちなんやから。」
南は腑に落ちない玉田を励ますように肩をたたいた。
あ~~~
自由だ~~。
ひとりがこんなに自由なんて。
もう、毎日のようにオフクロに見合いの話振られることもないし。
オヤジにも、いい年こいて遊び歩いてみたいな説教もされないし。
もっと早くこうすればよかった。
泉川は一人の部屋のベッドに大の字になってつくづく思った。
彼女も連れてこれるし。
泊めたってOKだし。
・・・・
まだ真新しい部屋の天井にはシミひとつない。
真っ白で。
まるで自分の頭の中も真っ白になってゆきそうだった。
でも
今は
『彼女』以外の女の子とどうにかなろうなんて
全然思えない。
この部屋に泊まりに来る女性のシュミレーションは
『彼女』だけだ。
シンとしたこの部屋がすごくすごく寂しく思えた。
「なに? もう挫折?」
いきなり実家にやって来た泉川に母は嫌味のように言った。
「ン? まっさか・・・。 快適ですよ。」
そのまま部屋の隅のネコたちのスペースに行った。
マリアは3ヶ月ほど前に子供を産んで、乳離れをしたあと、5匹のうち4匹は貰われて行った。。
残った1匹の子猫が母親の周りでじゃれながら遊んでいる。
マリアは真っ白なのに兄弟の中でこの1匹だけ毛色にグレーが混じっていた。
「こいつ。 まだ貰い手ついてないの?」
抱き上げて母に訊いた。
「ええ。 まあ・・そのうち、」
母はテーブルを拭きながら言った。
「おれ。 もらっていってもいい?」
そのまだ小さな小さなネコにキスをした。
念願の一人暮らしを始めた泉川でしたが、やっぱり・・・
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