南に婚姻届の証人を・・・
志藤はうーんと考え込んでしまった。
「しょうがないですね。 じゃあ戻ってきたら教えてくれませんか。」
夏希はそれを折りたたんで言った。
もちろん
夏希は真太郎と南の状態を知らない。
このデリケートな時期に、こんなことを南に頼んでもいいものか・・・
「あ、待って。」
志藤は彼女を呼び止めた。
「はい?」
「それ。 おれとかじゃアカンかな、」
志藤は少し困ったように言った。
「え・・・本部長・・じゃなくて、志藤取締役が?」
怪訝な顔をされた。
「高宮が南にって?」
「いえ・・あたしに任せるって言ってくれましたけど。 まあ、ひとりは斯波さんで・・もう一人はやっぱり南さんかなって。 ほんと色々お世話になったし、」
まあ
当然といえば当然なのだが。
「・・南も今・・ちょっと色々あって。 そういうサインをする状況でもないんじゃないかって・・・」
志藤は何て言っていいか困ってしまった。
「・・いろいろって・・・。 まあ忙しいでしょうけど。 ちょこっとサインと印鑑もらうだけで。 あ、別に取締役じゃヤだとかそんなんじゃないですけど、」
怪しまれてしまった。
南が真太郎との関係に悩む中、
この幸せな二人の婚姻届にサインをさせるということが
やっぱり
どうしても酷な気がして。
「・・ん~~~、」
志藤が悩んでいると、いきなり後ろから
「もう。 何モメてんねん。 そっか。 ついに入籍することになったんやな。 うんうん、あたしでよかったら。 サインでもなんでもするで、」
いつの間にか南が帰ってきていて、いきさつまでも聞かれていた。
「み・・南・・」
志藤は驚いた。
南は焦る志藤を横目にすらすらとサインをして、バッグから印鑑を取り出し捺印をした。
「はい。 おめでと。 よかったね。」
南はニッコリ笑って夏希にそれを手渡すと、
「ありがとうございます!! これで一安心。 あとでちょこっと抜けさせてもらって区役所に出してきます!」
嬉しそうに一礼して部屋を出た。
南はふっと笑って、
「別に。 気なんか遣わなくてもいいのに。」
印鑑をしまいながら言った。
「・・・」
志藤は黙ってしまった。
今の自分の状況を考えると少しつらいことですが、南は夏希のために喜んで婚姻届の証人になりました。
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