「うん。 正式にファンクラブ発足させて、チケットの前売りも前回の20%アップだし。 千堂茜のコンサートの成功で、お客さんも増えそうだな。」
斯波は珍しくテンションを上げて言った。
「ユーリ。 がんばらないとな~~。 あんたファンクラブ担当やろ?」
南が有吏をからかった。
「え、ぼくは・・。 HPの更新とか会報の編集とかくらいで。 そんな、」
謙遜する彼に
「でも、よくやってるよ。 ほんと。 この調子で頑張れば。 正社員になる日も近いんじゃない?」
玉田も褒めた。
「え~~、そうですかあ? やー、どうしようかなァ、」
いつものように八重歯を見せて子供のような笑顔を見せた。
夏希は時計を見て
「あ、いけない。 帰らなくちゃ、」
と慌てて支度を始めた。
時計は6時を指している。
「なんか用事?」
真緒が言うと
「実は~。 先週からあたしお花を習っているんですよお、」
夏希はため息をついた。
「は? お花? って華道?」
あまりに彼女とイメージが合わずに南は聞き返す。
「はあ。 ・・隆ちゃんのお母さんが。 そのくらいはたしなみとしてやっておきなさいって・・。」
「ああ、『花嫁修業』ね。」
真緒は笑った。
「おまえが花なんか活けられんのかよ、」
斯波はバカにしたように笑うと
「はっ、花くらい! 少しは・・」
勢いよく反論しようとしたが、だんだん声が小さくなった。
「てゆーか。 あたし・・正座とか全然ダメで。 もう10分も立たないうちに足がしびれてしびれて。 この前も立ち上がった時にコケちゃって。 先生の作品を倒しちゃって。 もう大変なことになっちゃったんですよぉ~~~、」
その話にみんな大笑いした。
「なんっかもう・・目に浮かぶってゆーか。」
「その上。 料理教室にも通わされて・・」
夏希は遠い目をした。
「料理も?」
「ま、確かに。 まともな料理とか作れるようになんなきゃって思うんで。 でもね。 このテキトーな性格が災いして。 家で同じものを作ろうと思っても、ぜったいに違う料理になってるんですよ!」
みんなまた大笑いした。
「料理教室でポトフ? だかなんだか習ったから、家でも頑張って作ったんです。 でも! 隆ちゃんがそれ見て、いきなり『え? これ 肉じゃが?』とか言っちゃって! 『肉じゃがじゃないよ! ちょっと食べてみてよ!』って言ったら。 食べても肉じゃがだって言うんです~~。 味見をしているうちに物足りなくてかつおぶしを足したせいかもしんない・・とか。」
「え~~? もうなんでフレンチなのにかつおぶし~? 勝手にアレンジしちゃって、」
真緒はデスクをバシバシ叩いて大笑いした。
「や、なんか。 やっぱあたし日本人だからムリだな~~って、」
「そーゆー問題じゃないし!」
みんなに一斉につっこまれた。
結城もつられておかしそうに笑ってしまった。
事業部の明るく、堅苦しくないこの空気が
だんだんと心地よく思えるようになっていた。
事業部もようやく落ち着きを取り戻しました・・
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