緊張するようにネクタイをもう一度確認して
事業部のドアの前に立った。
ふうっとひとつ息をつく。
ドアノブに手を掛けようとした時に
いきなりドアがガバっと開いたのでドキっとした。
「あれっ!?」
夏希がポカンとしたように立っている。
「あっ・・えっと、」
結城は何を言っていいのか戸惑ってしまった。
すると夏希は彼をジーっと見て
「早いッスね~~。 まだ8時ですよ~。 あたしは今日ちょっと川崎まで行かなくちゃだから早めなんですけど~。」
暢気な感じで言った。
「えっ、あ~・・・まあ、」
「なんか結城さんのデスクの上。 色んなもの乗っかっちゃって。 郵便物とかも。 ホントちょっと留守すると大変ですよね。 八神さんの机の上なんか! この前南さんが専用のパソコン置き場にしちゃって! 引き出しも勝手に使われてるんです! 笑っちゃう~、」
「はあ・・」
ぼんやりしていると、
「あれ? 結城? おはよ、」
南がやって来てぽんと背中を叩いた。
「お、おはようございます・・。 あのっ!!」
切り出そうとすると
「ねえ、この前さあ。 クレスト・ムーンの仮契約一緒に行ったやんかあ。 あそこの女社長な、契約にぜひあんたを連れてきて欲しいって。 あたし一人で行ったらアカン雰囲気やねん。 一緒に行ってくれる?」
いきなり仕事の話をされた。
「え・・あ・・はあ、」
「あの社長。 まあ、年は40後半やけど。 色っぽいおばちゃんやったもんなあ。 めっちゃ現役!って感じで。 ほんまにも~。 おばちゃんキラーやし~、」
南は肘でぐりぐりと結城の脇をつついた。
「や、あの・・・!」
きちんと謝りたいのに。
みんなに迷惑掛けて・・
結城の思いとはうらはらに
さらに
「あ、おっはよ~、」
真緒も明るくやって来た。
そして結城の姿を見て
「ね~、ちょっとさあ。 今日のネクタイ。 ホストっぽくない? 」
いきなりネクタイを手にして言った。
「はあ?」
「もうただでさえ見た目怪しいのにさあ。」
「え~。 ホストクラブって行ったことないんですけど。 こんな感じなんですかあ?」
夏希が興味津々に言うと
「あたしだって行ったことないよ! でも新宿2丁目って感じ~。 も、ほんっと。 怪しいんだから~、」
真緒も笑って結城の背中を叩いた。
な、なんなんだ・・
結城は半ば呆然としてしまった。
いつものように事業部のメンバーは自然体で結城を迎えます・・
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