Only one love(20) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

玉田も堂々とした茜の演奏に

ずっと胸がときめきっぱなしだった。



茜のことはオケに入ってきたときから

すごくその才能に目を惹かれて



ぜったいにすごい演奏家になる!


と信じて疑わなかった。



自分もヴァイオリニストだった端くれとして

こういう才能を目の当たりにすると

ちょっと嫉妬するくらいに


彼女は本当に魅力的な子だった。




斯波や志藤は茜を売り出したい、と申し出た自分に反対することもなく



「才能ある子はバンバン売り出した方がいいから、」



と、自分のプロデュースを見守ってくれた。



初めてここまで任されて、本当にヤル気に満ちていた。




そして、フィナーレ。



茜はニッコリと笑って、観客の拍手に応えた。


有吏も夢中で拍手をしていたが、それを見ていた結城はスッと帰ろうとしていた。



「ゆ、結城さん、」


思わず呼び止める。



「彼女に会っていかないんですか?」



結城はくるっと彼に振り返り



「別に。 話すこともないし、」



あまりにそっけない答えだった。



「でも!」



きっと彼女は彼を待っている・・・



有吏は胸が苦しくなった。



すると結城はそんな彼の心の中を見透かしたように



「ホント。 彼女の『演奏』を聴きに来ただけだから。」


と言って早足でその場をあとにしてしまった。



舞台からはけてきた茜は玉田と握手をしたあと、目で『彼』を探していた。


有吏はそんな彼女の心がわかりすぎてしまって。


少しだけ舞台袖で彼の姿を探し、いないとわかると見た目にわかるくらいガッカリしていた。



こんな彼女の顔


見たくなかった。


胸が苦しくなってくる・・・




有吏は自分が勝手に失恋気分に陥っていたのだが、

結城に対して嫉妬心が沸く、というよりは

自分と同じように片思いをしている茜の気持ちに傾倒してしまって。



悲しくて

悲しくて


どうしようもなかった。




「本当に素晴らしかったよ。 今まで聴いた演奏よりも・・ずっと、」


玉田はまだ興奮していた。


「ありがとうございます・・・。 いろいろアドバイスしてくださった玉田さんのおかげです。 ほんと、あたしひとりの力では、」


茜は少し興奮を抑えるように笑顔で言った。



これから


彼女と北都フィルの競演でヴァイオリンコンチェルトもやりたいし

CDやDVDも出していきたい。


玉田は彼女への夢が膨らんだ。



そして、茜もこのコンサートを成功させたことで

演奏家として、ひとつの壁を越えた気がしていた。


「おめでとうございます、」


有吏はそっと茜に頭を下げた。


「ありがと・・・。 なんかまだ身体がフワフワしてる。」


茜は頬を紅潮させていた。


そして



「・・・ほんと。 音楽って素晴らしい。 何だか今まで思ったことないほど・・そう思えて。」



茜はヴァイオリンを大事そうに抱きしめながら、本当に本当に実感を込めてひとりごとのようにそう言った。



コンサートを成功させた茜は、今まで以上にヴァイオリンに目覚めてゆきます。


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