A day of that summer(1) ~志藤&ゆうこ番外編 | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

どこからともなく

お囃子の音が聞こえてきて。


もうそれは毎年の風物詩。



「ねっ! どお? 新しい浴衣! おばあちゃんが作ってくれたんだよ!」

ひなたは嬉しそうに志藤の前でくるっと回って見せた。



「ん。 似合うやん。 あんまり遅くなったらアカンで。」

とニッコリ笑う。



「うん!」

ひなたは嬉しそうに出て行った。




三社祭の日は

もうこの辺は朝から大騒ぎで。


ゆうこと結婚して初めてその祭に借り出された時は

なんの暴動だって思うくらいの騒ぎで。


神輿を担がされて、翌日は筋肉痛で動けなかった。




ひなたも祭好きの義父の血を引いたのか、小さい頃から祭になるともう朝からテンションが上がりっぱなしで、

中学生になった今も、昼間は半被を着てもう大人に混じって神輿を担ぎ、夜は浴衣に着替えて友達と遊びに行く。



もう身長も150cm以上あって、こうして浴衣を着て髪もきちっと結い上げると、とっても中学生に見えない。

ちょっとだけ女らしくもなって。




そんな娘を眩しそうに見つめた。




「ごめんなさい。 夕飯が遅くなって。」

ゆうこも浴衣姿で夕飯の仕度をしてきた。


「ああ・・ええのに。」

ずっと地元の彼女は昼間は義母と一緒に近所の人と、祭の仕度に忙しかった。


「涼太郎、みんな呼んできて。 ごはんよ、」

そこにいた涼太郎に声をかけた。


「はあい、」



「いっつも。 浴衣でいてくれたらええのになあ、」



志藤はビールグラスを手に笑った。

「え?」


「ゆうこ。 めっちゃ浴衣似合うし、」


「もう・・何を言い出すんですか・・」

ゆうこは少し顔を赤らめた。




早いよなあ。




この頃、月日の速さを実感する。



ひなたを見てると、本当にそう思う。




もう13年も経つねんもんなァ・・・




「どーしたんですか? ぼうっとして、」

ゆうこが言うと、


「ん? ああ。 なんか・・。 急に老け込んだって感じがしてな、」

頬杖をついて言った。


「はあ?」



「なんか。 ひなたが生まれたときのこと。 思い出した、」



志藤はふっと笑った。



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ゆうこと何とか結婚をして。

慌しく新婚生活が始まった。


と、同時に

クラシック事業部の創設を秋に控えて、志藤は地獄のように忙しくなっていった。


ようやく結婚できたと言うのに、家に帰るのはいつも深夜近くで。



「身体はだいじょうぶですか?」

毎晩、きちんと起きていてくれるゆうこは、志藤の身体を気遣った。


「ゆうここそ。 もうそんなんでしんどいのに。 早く休んでいいのに、」


「でも・・」




季節は夏になり。

もうすぐ臨月のゆうこは先月から仕事を休んでいる。

おなかもすごく大きくなってきて、立ち上がるのもしんどそうだった。



「大丈夫です。 つわりで苦しんでいたときのことを思えば。 全然楽です、」



彼女はいつも笑顔で自分を迎えてくれて。

それがいつもホッとできた。




そっと彼女のおなかに触れるのが日課になって。

おなかの子供が元気に動き回るのが、手にものすごく伝わってくる。



「ほんっと。 もうすっごい動いてるんです。 元気で。 ひょっとして男の子かも、」

ゆうこは笑った。


「どっちでもいいって。 ほんまに元気で生まれてきてくれれば、」




あの日の小さかった命と

もうすぐ会える・・・



すったもんだの末に結婚をした志藤とゆうこ。 生まれてくる赤ちゃんを待ちわびながら幸せいっぱいに暮らしていましたが・・



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